南北両極地域の地磁気活動間の関係(超高層物理部門)(<特集>南極シンポジウム)
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概要
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南極地域における地磁気活動の諸性質をそれに対応する北極地域の同時活動と対比して調べた.地球大気圏外から荷電粒子流が地球磁力線に沿って,地球の南北両極地域に侵入するのに際して,どの程度の均等性や同時性があるかという問題を調べるのが主目的である,得られた主な結果は次の如くである.(i)南極地域のSD-場の様相は,既に良く調べられている北極地域のSD-場の地磁気赤道に対する鏡像と考えて大差はない.(ii)昭和基地(地磁気座標-69.°7,77.°6)のK指数は,主として北半球高緯度地磁気活動を代表するK_p指数と殆んど平行して変動している.K指数でのちがいが3以上になることは全体の2%弱しかない.この2%程度の頻度でおきる昭和基地上空での嵐は,天頂の極光活動,電離層のBlackout等によって,局部的な擾乱であることが確められた.(iii)南極地域と北極地域における地磁気活動の相関を更に詳しく吟味する為に,地球磁場の磁力線に対して共軛な二点,即ち同一の磁力線が通る南及北の地磁気観測所について地球磁場変動の様子を調べた.完全な地磁気共軛点はないが,南極大陸のLittle America(地磁気座標,-74.0,312.0)とCanadaのBaker Lake(73.7,315.1)とがこの条件をほぼ満足している.この2点の他に比較として,CanadaのChurchill,南極大陸のByrd Station及びHalley Bay(位置は第1表に示してある)の地球磁場変動をも調べた.Little America(LA)とBaker Lake(BL)が共に地方時夜間時にある時は,独立な湾型変化の対応は非常によく,磁力変動水平成分変化の10分間平均値の相関は0.85に達し,又湾型変化極大値の時刻は読取誤差の範囲で一致する.然し地方時昼間時には,この相関は明瞭に減少する.BLの共軛点はLAより地磁気西方約600kmであるから,夜間時の微粒子流束の断面は600kmをほぼ覆うほど大きく,昼間時ははるかに小さいと結論される.しかし,上の何れの場合も,LAとBL間の相関はBLとその南方約500kmにあるChurchillとの相関よりもはるかに良い.この事実は,極磁気嵐を起す微粒子流束の断面が地磁気東西に延びた形をして居り,これが南極地域と北極地域との双方にほとんどいつも同時に侵入してくる事を表わしている.又磁気嵐時には,LAとBLとの相関は著しく悪くなる.当然のことながら磁気嵐場の中,大気圏外電流に因る磁場変動によって,LAとBLとの地磁気共軛性が阻害されるからであろう.(iv)平均直径400〜600km程度の微粒子流束の侵入による極磁気嵐は西方に移動する傾向がある.即ち微粒子流の運動を主として決定する要素は正荷電粒子であることが推定される.
- 国立極地研究所の論文
著者
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国分 征
東大理
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国分 征
Geophysics Research Laboratory, University of Tokyo
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永田 武
国立極地研究所
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永田 武
Geophysical Institute, Faculty of Science, University of Tokyo
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