がん患者における受療の遅延とLocus of Control
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概要
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がん患者の心理的適応の問題は医学心理学における重要な分野である。自分の持つがん性疾患または不明ではあるが悪性の疾患を思わせる症状に気づいた患者が, すぐにあるいは進んで医療のルートに乗るとは限らない。適切な治療を受けることをためらったり, 拒否する者さえいる。したがって, 症状に気づいてから医療を受けるまでの速さが, 悪性新生物に侵されたという困難な状況に対処するための重要な要因となる。そこで, 本研究はがん患者が治療のために病院を受診することに対する遅延に関する心理的要因を明らかにすることを目的として行われた。対象は国立がんセンター病院に入院し, 手術を受ける予定になっている90名の女性外科がん患者である。心理的要因は, RotterのInternal-External Locus of Contro1 (IE), 状態特性不安尺度(STAI), モーズレー性格検査(MPI)である。がん治療のための病院受診の遅延は, 異常に気づいた時からがん治療のための病院受診までの日数とした。 IE得点により, 患者を4群に分けた。遅延が最も長かったのは, 内的統制群であった。本知見はLocus of Contro1 が受療遅延の重要な心理的要因であり, 超内的統制群よりも内的統制群のほうが早く治療を受けに行くことをためらう傾向があることを示している。内的統制群で遅延が最も長かったのは, 彼らががんに侵されているという困難な状況にあることに加えて, 日常の場面では自分で状況をコントロールすることにより問題を切り抜けることができたために, 困難な状況に対処するだけの充分な防衛機制が発達していないためと思われる。したがって, 内的統制傾向の患者には特に心理的サポートが必要であろう。
- 1988-01-15
著者
-
中里 克治
岩田県立大学社会福祉学部福祉臨床学科
-
中里 克治
東京都老人綜合研究所心理学
-
水口 公信
千葉大学医学部麻酔学教室
-
水口 公信
聖路加看護大学
-
水口 公信
聖路加看護大学大学院:(現)山王病院
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