ミラーと永遠回帰について
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概要
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Nietzscheは今日に至るまで,我々に影響を与え続けている。その中にあって,Henry Millerもまた,彼に感化されたアメリカの思想家に位置づけることができる。本論文では,Nietzsche哲学の種々の概念のうち,特に「永遠回帰」に焦点を絞り,それのMillerとの関わりについて解き明かしてゆく。この永遠回帰という概念には多くの誤解があるが,そのひとつに永遠回帰は「同じものへの回帰」を表す,といった類の誤解がある。ところが『ツァラトゥストラ』を分析すると,著者はこの永遠回帰の悪しき解釈を二度も繰り返し否定していることがわかる。つまり,永遠回帰は同一的なものへの回帰を意味しえないのである。というのも永遠回帰は,同一的なものとは反対に,すべての先行的な同一性が廃止され解消されるような世界(力の意志の世界)を前提にしているからである。『南回帰線』におけるMillerはNietzscheのこの意図を正確に受け継いでおり,それをさらに発展させている。Millerのすべての作品に繰り返し現れる「神経叢」や「卵巣」の概念,「分節化」や「微分化」の概念は,実は,Nietzscheの「永遠回帰」の遺産なのである。
- 富山大学の論文
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