『源五兵衛おまん 薩摩歌』の世界
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概要
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『源五兵衛おまん 薩摩歌』は『曽根崎心中』に次いで世話浄瑠璃二作目の模索期の作品である。時間的・空間的に近松の時代から離れた事件を題材にした作品なので、事件の真相は不明で、既成の僅かの歌謡又は西鶴の『好色五人女』巻五「恋の山源五兵衛物語」によってイメージを得、近松独自の世界を創造したのである。この期の近松は浄瑠璃から離れた観客を呼び戻すかに創作意図があった。浄瑠璃から離れた観客を引き寄せるには娯楽性・滑稽性・大衆演劇性がなければならない。この構想によって創作されたものが『源五兵衛おまん薩摩歌』である。従って特に構成を考えた作品である。二組の恋物語を複合する事によって、内容の展開を複雑にさせ、又歌舞伎のやつしなどの歌舞伎の方法を用いて観客に魅力を出そうとしている。主題は男女の誠実な恋であるが、***スが極端に表現されている箇所があり、主題を分裂させているように思われる。人物は類型化されており、展開に現実性が希薄で、仮構された作品であり、『曽根崎心中』よりも後退した模索期の作品である。
- 1997-12-10
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