「猿害」を通してみた山村経済の変貌
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概要
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過疎化,高齢化が問題となって久しい山村では,近年,ニホンザル(Macaca fuscata,以下サル)による農作物被害「猿害」が発生している。過疎化,高齢化と猿害とは単に発生している場所が同しというだけでなく,本質的には源を同じとする問題としてとらえ,猿害を通して山村生活の変化と今後の山村のあり方について考察した。そのような山村のうち,調査対象地として福井県遠敷郡名田庄村をとりあげ,サルの生息環境全休について聞き取り調査を行った結果,短期間に人工造林が拡大した時期と,被害が発生した時期とに約15年のタイムラグがあり,森林の変化がすぐに猿害に結び付くとは考えられない。人間社会の変化との関連を見ると,早期に猿古の発生する場所は,もともとサルの群れが存在し,人口減少,または耕地面積に対する人口密度低下の割合の高い谷合の過疎,高齢化が進行している場所であり,最も遅く被害が発生するのは人口密度が高い場所であるという傾向がみられる。それゆえ対策としては,サルの「人慣れ」が進む前の発生の初期段階で防ぐことが有効であると推定される。また,今後の山村は猿古の予防のためにも,自然に順応した生活やコミュニティーを再構築する必要性が高まると考えられる。
- 1993-12-25
著者
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