Plasmodiophora brassicaeに感染したカブ根部皮層とカルス細胞における核DNA量(アブラナ科植物の根こぶ病に関する研究VIII)
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概要
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本研究はアブラナ科野菜のカブ根こぶ病において,根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae Woronin)が最もさかんに増殖している皮層組織の感染細胞と根こぶ由来の感染カルス細胞を供試し,感染細胞内の核DNA量を健全細胞のそれと比較し,この細胞の肥大機構を明らかにする知見をうるために行った。罹病性の高いカブ2品種に生じた若い根こぶと感染カルス組織の小片を酢酸アルコール液(氷酢酸:100%エタノール,容量比1:3)で固定し,70%エタノールで冷蔵庫にて保存した。加水分解は5NHClで25℃,40分間とし,Schiff試薬による染色は室温(約25℃)で4-5時間とし,やや押しつぶした組織試料の核を測定した。対照試料は染色性の安定したサザンカの新葉を常に上述の試料とともに同じスライドグラス上で同時処理した。測定は走査型顕微濃度計,ニコン・ビッカースM85を使用し,最大吸収波長の560nmで各試料当り30核を測定した。健全損と病根の皮層細胞には2Cと4Cの両核があり,感染細胞の核DNA量ぱ変異巾が大きく,4C核よりもさらに多い8C核もあり,さらに核DNA量の多い核もあった。健全及び保菌の両カルスにおいて,2Cと4Cの両核があり,保菌カルスでの変異巾は大きく,4C核よりDNA量の多い核も見出された。カブの根こぶと保菌カルスにおいて,感染細胞における変形体の核数の多少で示される菌の発育程度とその細胞の核DNAとの間では「早生大かぶ」はr=0.83,「耐病ひかりかぶ」でr=0.64という正の相関がみられ,感染カルス細胞における同様の実験でr=0.73の相関があった。以上から感染をうけた細胞内は異常な代謝となり,病菌の栄養発育にともなって核DNA合成のより増大となり,感染皮層細胞の正常な体細胞分裂の撹乱が示唆された。
- 岐阜大学の論文
- 1989-12-25
著者
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