カツラ辺材の枯死過程における抽出成分の消長
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概要
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広葉樹辺材の生理機能を特性化するために,カツラ(Cercidiphyllum jabonicum Sieb et Zucc.,カツラ科)を伐倒後,180日間,その外,中央及び内部辺材において主要抽出成分を定期的に定量した。伐倒直後の辺材中でのフェノール及びその配糖体成分量は乾燥辺材中でのそれより少なかった。辺材の枯死過程において,各々の成分に固有の消長が認められた。外部辺材では,糖類が主に代謝され,フェノール及びその配糖体類は主に内部辺材で生成された。これら成分間の消長には巧妙な時間差があった。すなわち,外部辺材で,sucroseは小さな増加の後,実験の序盤に急速に減少,glucoseは中盤に増加,そしてseauoyitolやarabitolのような糖アルコール類が中,終盤に増加した。内部辺材を中心に,フラバノノール(aromadendrin, taxifolin, amoeloptin)やフラボノール(kaempferol)が終盤において急激に増加した。しかも,これら配糖体量もこの期間中,アグリコン類とは別の消長をみせた。心材抽出成分として知られているtaxifolinとampeloptinが辺材の枯死過程において,かなり生成されることを確認した。また,180日の時点で,辺材中の主要フェノール類の顔ぶれは心材のそれと似ていた。以上のように,カツラ辺材の枯死過程は移行材における既知の心材形成過程と類似していると予想した。
- 岐阜大学の論文
- 1988-12-25
著者
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