生きたスギ樹幹中の樹液の緩衝能について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
生きているスギ(Cryptomeria japonica; Taxodiaceae)樹幹内の水平および垂直方向での成分分布の差を化学的に解明する研究の一端として,その樹幹全域から得た樹液について,pKa値と緩衝能を3回にわたって測定した。また,樹木の生理現象診断基準の一つとして,緩衝能の有効性を検討した。なお,緩衝能の測定法は次のようにした。伐倒後,スギ樹幹から5cm厚の円板を採集し,それより1または2年輪ごとに試料を削り取った。フレーク状の試料をメタノールで洗った。洗液の一定量を0.01Nの塩酸と水酸化ナトリウム溶液で滴定し,滴定曲線を得た。その滴定曲線からpKa値を読み取り,そのpKa±0.5の範囲で滴定曲線の最大値の逆数,dB/d(pH)(Bは酸またはアルカリ滴下量)を求めた。その逆数を生または乾燥試料の1gあたりに換算した。緩衝能の結果は次のようであった。1)スギ樹幹の組織間で緩衝能を比べると,通常,その値は師部,当年生木部,心材辺材,移行材(白線帯)の順に減少していた。2)組織ごとに緩衝能を比べると,水平および垂直方向で大きく異なった。3)5月には上述のような緩衝能の変異は12月のそれらに比べて変化に富んでいた。4)アテ材部の緩衝能は統一性を欠き,一定の傾向からは逸脱しているようである。以上から,測定方法に問題が残っているが,緩衝値は樹木の生理活動診断の基準の一つとして意義をもつものと判断した。
- 岐阜大学の論文
- 1985-12-15
著者
関連論文
- 岐阜県板取村のカブスギ集団の実態
- ローズウッド材の退色障害予知について
- 生きているスギ樹幹内での抽出成分の蓄積と分布
- カツラ辺材の枯死過程における抽出成分の消長
- ヒノキのフェノール性心材成分と心材色
- 生きたスギ樹幹中の樹液の緩衝能について
- 生きたスギ樹幹内のミネラル分布
- 生きたスギ樹幹内の水分布と狭水路
- てんぐ巣病に罹ったソメイヨシノの抽出成分
- マルバデイゴ(マメ科)のイソフラボノイド〔英文〕
- ユクノキのフラボノイドの季節変化〔英文〕
- ジャケツイバラの成分について
- コブ病に罹ったフジのイソフラボノイド〔英文〕
- 日本産フジキ属の抽出成分-9-フジキとユクノキ間のフラボノイド成分の化学分類学的比較〔英文〕
- 機器分析によるイソフラボノイドの組織的同定〔英文〕
- 日本産フジキ属の抽出成分-6-Formononetin-7-0-β-laminarabiosideと四種のイソフラボン配糖体の合成〔英文〕
- 日本産フジキ属の抽出成分-5-フジキ葉部の化学成分〔英文〕
- ジテルベン炭化水素組成の個体割合に基づくスギ天然林の地理的区分