金子みすゞ「積つた雪」の語用論的分析 : 非平行的解釈を動機づける構造的条件
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概要
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金子みすゞの詩「積つた雪」は,三つの連から構成された短い詩である。各連は,いずれも3行で構成されており,それぞれが,よく似た統語構造をもっている。そこで,一見,この三つの連は平行的な解釈を受けるのが妥当なようにも受け取られる。しかし,この詩の解釈には一定の傾向が認められ,第3連に解釈的な重点や共感的な焦点が置かれやすい。このような非平行的解釈は,この詩の構造的条件によって動機づけられている。小論では,音韻形態構造,語彙統語構造,談話結束構造の特性が,どのようにこの詩の非平行的解釈を動機づけ,決定づけているかを明らかにするMisuzu Kanako's Tsumotta Yuki (A Pile of Snow) is a short poem which includes three stenzas. Each stenza has almost the same syntactic construction of three lines. So it seems suitable that we may construe the three stenzas as in parallel. However, the interpretation of this poem has a definite tendency to be put more interpretive emphasis or more empathetic focus on the third stenza. This non-parallel interpretation is motivated by some structural conditions of this poem. In this paper, I describe how this non-parallel interpretation is motivated and determined by the features of phono-morphemic, lexico-sytactic, and discourse-cohesive structure of this poem.
- 上越教育大学の論文
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