くもの悲しみ・わたしの悲しみ : 八木重吉「雲」の語用論的分析
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概要
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八木重富の詩集『秋の瞳』に収められた詩「雲」は,解釈が曖昧となるような語彙統語特性を有している。学生の解釈にどのようなばらつきがあるのかを授業の中で調査してみると,学生は擬人化解釈と非擬人化解釈の両方をとるという事実がわかった。また,学生の中には,第1連には擬人化解釈をとりながら第2連には非擬人化解釈をとる(あるいはその逆)というような折衷的な解釈を行った者もいた。小論では,この詩の解釈に関する調査結果をもとにして,この詩の解釈可能性の広がりを支えている機構について語用論の観点から記述する。その記述を通じて,解釈可能性と解釈優先度のせめぎ合いという,語用論にとって重要な問題を議論することになる。The poem 'Kumo'('The Cloud') written by Jukichi Yagi, has a certain lexico-syntactic property which admit ambiguity into its interpretation. I have done serial surveys in my classrooms, in order to investigate how widely my students construe this poem. The survey revealed the fact that my students did construe this poem both in personifiable way and in non-personifiable way. And, several students selected the mingling way; i.e. the personifiable reading was adopted for the first stanza, but non-personifiable reading for the second (and vice versa). In this paper, I report my survey data in detail and discuss the interpretive potentiality of this poem from the viewpoint of linguistic pragmatics. Through that, I argue an important problem of pragmatics; the problem of confrontation between interpretive potentiality and interpretive priority.
著者
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