<論文>心筋梗塞と遺伝性素因に関する研究(2報) : CD14受容体, ウエルナー・ヘリカーゼ遺伝子
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概要
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背景 生活習慣病は遺伝性素因と生活環境因子の相互作用によって発症する多因子遺伝性疾患とも考えられ, 遺伝子変異と生活習慣病との関係が明らかになりつつある。日本でも, 食生活の欧風化に伴い, 生活習慣病の一つである虚血性心疾患は年々増加している。そこで, 心筋梗塞(Myocardial infarction : MI)の遺伝性素因の研究を続けてきた。 最近, 感染も心筋梗塞の重要な危険因子であることが分かり, CD14受容体の遺伝子多型(C260T)のT型遺伝子が危険因子であるとチェコ人とドイツ人で報告された。また, Werner症候群患者では若年で心筋梗塞での死亡率が多いことに注目した研究で最近, Werner Helicase(WH)遺伝子多型が心筋梗塞の危険因子であることもわかった。日本人についで, これら2つの遺伝子多型と心筋梗塞との関連について報告する。 対象 MIと診断された患者335名を患者群とし, 我々の研究調査に参加の承諾を得た30歳以上で, MIではない二つのグループをそれぞれの対照群とした。 方法 患者の抹消血からDNAを用いて, 変異部位の増殖はPCRで行い, CD14受容体遺伝子はHaeIIIで, WH遺伝子は, 制限酵素PmaCIで, それぞれのPCR産物を37℃で, 一晩消化し, 2%アガロースゲルに電気泳動し, エチレンブロマイド染色により, 蛍光検出し, MI群と対照群との間で遺伝子型分布と遺伝子頻度の比較をX^2検定を行った。 結果と考察 われわれの研究では, 心筋梗塞の危険因子として注目されているCD14受容体遺伝子およびWH遺伝子ともにMI群と対照群との間で遺伝子型分布も遺伝子頻度にも有意差はなかった。 しかし, 日本人ではT型の頻度は対照群0.515,患者群で0.541でチェコ人(対照群 : 0.352,患者群 : 0.492)であり, ドイツ人(患者群 : 0.470)のそれらよりも高いことに加えて, 年々増加している心疾患の予防のためにも, 今後, 注意すべき遺伝子の一つであろう。特に喫煙率の低い女性にとっては, かなりの確率で危険因子となろう。われわれの研究も含めて, WH遺伝子のRR型の頻度はMI群に比べて対照群は高く, CastroらによるとRR型はCC型やCR型に比べて, 総ての年齢において, 動脈硬化スコアが低い傾向を示しており, RR型はMIを防御する因子であることが示唆された。
- 聖カタリナ大学短期大学部の論文
- 2002-03-10
著者
-
近藤 郁子
愛媛大学医学部衛生学教室
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近藤 郁子
愛媛大・医・衛生
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山縣 英久
愛媛大学医学部衛生学
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山縣 英久
愛媛大学 医学部 衛生学
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近藤 郁子
愛媛大学老年医学
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近藤 郁子
国立療養所香川小児病院 小児科
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近藤 郁子
愛媛大学衛生学
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近藤 郁子
愛媛大学医学部衛生学
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吉村 脩
聖カタリナ女子短期大学
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近藤 郁子
愛媛大学 医学部 衛生学
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