食品成分含有量の分布と動向に関する研究(第2報) : シシトウについて
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概要
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食品中の無機成分については, 一つの食品でも, 品種, 季節, 地域および栽培方法により, また同一物でも, 部位, 成長過程によりかなりの変動があることを報告してきた.今回は高知県特産のシシトウの実と葉を材料に, 調理上の基礎的な実験と嗜好調査を行った.続いて, シシトウの実75体, 葉47体を用いて各種無機成分の分布型を決定し, さらに生育地域, 採取時期および部位による無機成分量の変化を調べた.(1)脱カリウム, 脱ナトリウム効果の著しい煮る操作について, 基本的な実験を行った結果, シシトウの実では, 水より5分間, 葉では, 沸騰水より3分間煮出すことにより, カルシウムの損失は少なく, 脱カリウム, 脱ナトリウムおよび脱リン効果をあげることができた.(2)抽出温度による無機成分の溶出については, 100℃の処理温度が優れているが, 同時にカルシウム, マグネシウムおよび鉄の損失も避けられない.(3)基本的な調理操作における無機成分量の変化については, 茄でる操作に脱塩効果を示しつつも, 個体差が大きいせいか, いずれの成分も調理操作に差がなかった.(4)カルシウムとリンの比率の良い実については, どのような調理が好まれるか, カルシウム含量の多い葉は, どうずればおいしく食べられるかを嗜好調査を行った.実については, 好みの順位は(1)てんぷら, (2)佃煮, (3)妙める, (4)茄でる, (5)焼く, となった.葉の場合には, 茄でたものを, 砂糖醤油で調味するのが好まれた.(5)シシトウを試料として各種無機成分および水分の濃度分布を調べ分布型の検討を行った.その結果, 実, 葉, 共に, いずれの無機成分および水分も実数または対数変換において正規分布を適用することができた.従って, シシトウにも病質病態にとって材料中の成分量の計算が確かで便利な, 平均値と標準偏差を用いる事ができる.(6)生育地域による無機成分量については, いずれの成分も, 県西部地区の含有量が高い.実では, カルシウムは約1.3倍, リン約1.4倍, 鉄約1.7倍, 葉では, カリウムおよびリンは約1.2倍, カルシウムは約1.4倍と窪川地区が山田地区より多かった.(2)採取時期による差については, 実のカルシウムが夏期に多かったのを除き, その他すべての成分は秋期に多く含まれていた.特に葉においては, カリウムは約1.6倍, マグネシウムは約4.3倍多かった.(8)実と葉については, 実よりも葉の方にいずれの無機成分も多く含まれている.特にカルシウムはその差が顕著で, 夏期は約4倍, 秋期には約20倍多く含まれていた.
- 高知学園短期大学の論文
- 1982-10-15
著者
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中山 美津子
高知学園短期大学 調理特殊栄養学研究室
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桑原 豊子
高知女子大学 食品学研究室
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中山 喜代子
高知女子大学 食品学研究室
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中山 美津子
高知学園短期大学調理・栄養学研究室
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中山 喜代子
高知女子大学食品加工研究室
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桑原 豊子
高知女子大学食品加工研究室
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中山 美津子
高知学園短大
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