琉球における 4-H クラブの教育的および社会的問題点の研究(農学科)
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概要
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1.この研究は琉球の4-Hクラブの低調に影響を及ぼしている重要な教育的因子と社会的因子を究明することが主な目的である。2.この研究は主として43人の全琉球の代表的な現および元4-Hクラブ員を対象として行なわれたアンケートの結果にもとづいている。3.この研究の調査期間は1966年7月から1968年6月までである。4.次の9事項が重要な教育的因子として究明された。1)4-Hクラブのプログラムがプロジュクトに偏重して単調である。プロジェクトは4-H活動の中心ではあるが, プログラムは次代を担う公民育成の見地から総合的な幅の広いものにすべきである。そのためには, 補助活動, 一般活動を加えてバランスのとれたプログラムを樹立する必要がある。2)プロジェクトが農業の生産関係に偏重している。プロジェクトの目的は生産ではなく, 課題を解決する科学的態度の訓練である。プロジェクトの数や種類は各メンバーの興味と必要に応じ, さらに家庭や地域社会の実情に適合したものを選択することが望ましいが, それの選択の機会を豊富に与える必要がある。3)4-Hクラブに加入する年令が一般的に高い。43人の調査対象の中, 50%以上が20才過ぎてから加入している。学習効果とクラブへの定着性の観点から, 中学校を卒業した時点で, 勧誘に努力すべきである。4)4-Hクラブの年令的範囲が広い。そのために新入者が歩調を合わすのに困難をきたし, 中退するケースがある。その改善策として15才から20才までを普通の4-Hクラブ員とし, 21才から25才までを青年農業クラブ員として別々に組織すると効果的である。5)女子の4-Hクラブ員が非常に少ない。普通, クラブ員総数の20%以下である。琉球における家族主義農業と家庭および社会生活における女性の果す役割の重要性から女子クラブ員の増加は積極的に推進される必要がある。6)4-H普及員の制度がない。4-Hクラブの育成は農業改良事業, 生活改善事業と並行した普及事業の三大分野の一つである。現在それは農業改良普及員と生活改善普及員によって分担されているが, 専任の4-H普及員を設置することが望ましい。7)4-Hクラブの教材, 特にプロジェクト本の欠乏のために, プロジェクト活動に支障をきたしている。プロジェクト本は必要な分野からできるだけ多くの種類を設け, プロジェクトの過程に応じて希望者が何時でも得られるように準備しておく必要がある。8)琉球では小中学生は4-Hクラブに加入していない。4-Hクラブの実践学習による学校教育のカリキュラム活動, 社会的経験, 農村生活の重要性の理解の強化などの点から, 小学校5・6年生および中学生を自主的にクラブに参加せしめることは非常に重要である。世界の多くの国々がその制度をとっている。9)農村青少年の技術およびリーダーシップの訓練を目的とした公式の施設がない。日本本土では農林相の農業伝習施設に関する要綱に基づいて, 都道府県の機関として農業経営伝習場が全国的に設置されている。それは農業技術のみならず, 団体生活を通してリーダーシップの訓練を兼ねた総合的機能をもっている。この訓練生は4-Hクラブや農村社会のパイロットとして期待される人的資源である。5.次の5つの事項が重要な社会的因子として究明された。1)篤志指導者が欠乏している。それは一般の成人が4-Hクラブをよく理解していないということと, 篤志指導者の資質を向上せしめるための訓練が行なわれていないということが主な原因である。その訓練の責任は原則として普及員にある。普及所と主務課が協力して, 地区的, または中央的指導者訓練を実施する必要がある。篤志指導者は普及事業にとってそれ自体が目的であり, また手段である。2)親の関心が薄い。4-Hクラブ員の基礎的必要条件を満たすために親の協力は絶対に必要である。特に耕地面積が小さい上に, 青少年の労働力がウエイトをしめている琉球の農家にとっては, 4-Hクラブ活動は直接に生活に影響を及ぼすので, 親子の理解は前提条件である。親子の関係をスムースに作用せしめるのに篤志指導者の役割は効果的である。3)4-Hクラブの組織が特定の地域に片寄っている。1966年現在, 総数59市町村の中, 8市町村だけに片寄り, 他の市町村, または他地区に誕生しない。そのような現状でクラブ組織を拡張するのにもっとも効果的な方法は広域性のクラブを組織して, 全市町村にパイロット的クラブ員を設置することである。4)4-Hクラブ委員会の制度がない。社会の人々に宣伝して4-Hクラブの理解と協力を計り, クラブ活動を推進するために, 4-Hクラブ委員会の役割は重大である。独立した組織でもいいが, クラブ代表を加えた総合的な普及委員会を組織して代替するのも一方法である。5)4-Hクラブ財団がない。4-Hクラブ財団は民間の立場から4-Hクラブ活動を自主的に推進する篤志団体である。
- 琉球大学の論文
- 1969-10-01
著者
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