<原著>下等シロアリの消化管内でのセルラーゼ系酵素の分布とそれら酵素の部分精製
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概要
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イエシロアリの体全体で検出されたアビセラーゼ活性の, 約20%, 18%および36%に相当する活性が, 唾液腺, 中腸と後腸でそれぞれ検出された。また, これらの組織でのCMCアーゼ活性の値は, 唾液腺(約35%), 中腸(約21%)と後腸(約18%)であった。体全体に存在するβ-D-グルコシダーゼの約75%に相当する活性が中腸で検出された。すなわち天然セルロースをグルコースにまで加水分解するのに必要な全てのセルラーゼ成分が唾液腺から中腸までの消化管内に存在していた。シロアリ体内に存在するグルコースと, グルコースから合成され昆虫のエネルギー源として重要な役割を果たすトレハロースの大部分は, 腸を除いたシロアリ組織に存在しており, また腸内のグルコースのほとんどが中腸で検出された。これらの結果は, シロアリに取り込まれた天然セルロースが前腸と中腸でセロオリゴ糖まで加水分解され, このセロオリゴ糖が主として中腸でグルコースまで分解され, 中腸壁を通ってシロアリ体内に吸収されることを示している。陰イオン交換クロマトグラフィーにより, シロアリ組織から5種類のセルラーゼ成分が, また後腸(原生動物を含む)から2種類のセルラーゼ成分が分離された。シロアリ組織抽出液には, アビセラーゼとCMCアーゼの両活性を示すセルラーゼ成分(3種類), CMCアーゼ活性のみを示すセルラーゼ成分(1種類), および主としてβ-D-グルコシダーゼ活性を示すセルラーゼ成分(1種類)が存在していた。後腸抽出液には, アビセラーゼおよびCMCアーゼの両活性を示すセルラーゼ成分(1種類)と, アビセラーゼ活性, CMCアーゼ活性およびセロビオヒドロラーゼ活性を示すセルラーゼ成分(1種類)が見出された。これらの結果から, 原生動物体内のセルラーゼ成分とは異なるセルラーゼ成分がシロアリの消化管内に存在していることが明らかとなった。
- 近畿大学の論文
- 1998-03-31
著者
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