<論文>大本聖師のトランスジェンダー志向を再考する
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概要
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本稿の目的は,「宗教と男性性」という問題意識に基づいて,近代日本の宗教界に大きな影響を与えた神道系の新宗教である大本の教祖であった出口王仁三郎(1871-1948)の思想と行動を再検討し,彼に「トランスジェンダー志向」があったことを示唆し,さらに,その現代的可能性を検討することにある。大本の教義において「男体女霊」の「変性女子」と自己規定した王仁三郎は,時として女装パフォーマンスを行い,天皇制国家の記紀神話を読み替えて自らを「泣く噴罪者のスサノオ」に同定した。そして軍国主義下で「母性賛美」の要素が希薄な「女性美の賛美」である女性賛美の教説を説き,「男性は美しい女性の玩具である」「女性は全員美人である」と説いた。彼の女性賛美には,ナルシズムが感じられる。彼は,トランスジェングー志向とナルシズムによって軍国主義下のジェンダー秩序に歯止めをかけていたと考えられ,最後にそうした戦略の現代的な意義を検討する。
著者
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