<展望>統計資料から女性の健康を考える : 日韓の比較
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,日本と韓国において,ジェンダー,すなわち社会文化的に形成された性差の問題(社会的性差別)と女性の健康問題の関連性を探ることを目的とし,国内外の入手可能なインターネット情報および地方自治体の報告書等から収集した,女性の健康に関連すると思われる統計資料をデータとした。国際的に女性の健康問題を社会的な見地から考えるという動きは,1994年の第3回国際人口開発会議において,従来の「人口の数」よりも「個人,女性の意志・権利」を尊重するという立場からreproductive health & rightsという言葉が生まれ世界中に広がったことから始まったものである。今回,その翌年に開催された1995年の第4回世界女性会議(北京会議)において作られた12項目の行動綱領を検討したところ,「女性の健康」は重要な検討課題として示されていることがわかった。次に,ジェンダーに関連して国連が示している4つの指標(GEM・EOI・GOI・HDI)とともに,収集した情報から日韓における共通性と相違点を比較した。日韓のデータには共通点が多く,両国とも女性の健康問題に関してジェンダーが根本のバリアとなっていることがわかった。なお,学歴・雇用・昇進問題,女性が適切な医療を受けるための経済的側面に焦点を当て検討したところ,日韓共に,既に性差をなくすための政策が実施されているにも関わらず,前述の4点に関しては未だ女性の方が男性より恵まれていなかった。また,先に示した国連による4指標においても,先進諸国の中では,両国とも性差別が厳しい状況にある。特に韓国は4項目とも最下位であった。今回の結果において,もっとも気がかりなのはジェンダーバイアス(社会的性差別)により再就職の機会や,その職種の選択においても不利な状況にある母子世帯の女性であった。ことに医療費が上昇している中,男性より低い収入である女性にとっては必要な医療を受けることも厳しい実情であり,このような状況下にあれば,当然心身の健康にも影響を及ぼすことも考えられる。そこで,日本においての母子世帯の女性がどのような困難を抱えるか,今回得たデータを元に仮想の事例を示した。結論は今回得たデータより導き出しているが,ここから提言したいことは,まず,社会全体がよりジェンダーへ関心を向け理解すべきである。そのためには,国や県レベルで男女差への改善に向けて,その到達時期の明確化や,活動人員相当数の確保とともにガイドラインをつくること,そして女性自身が性差別撤廃のために声を発していくことが求められる
著者
関連論文
- 昭和20年代の出産体験者の語る初経から更年期まで : 宮崎県A町在住者に聞く
- 哺乳びんの消毒方法と母親の認識
- うっ滞性乳腺炎動物モデルの作成
- 183 授乳婦の乳房トラブル発症と食事摂取状況の実態(乳房管理、母乳3, 第46回 日本母性衛生学会総会 学術集会抄録集)
- 040 死産を体験した母親とその家族に関わる看護者の思考過程 : 自己の看護実践の分析を通して(妊娠、分娩、産褥8, 第46回 日本母性衛生学会総会 学術集会抄録集)
- 英語教育に関する諸要素 : 海外3地域における調査報告
- 更年期女性の健康実態 : 健康意識・自覚症状の負担度・更年期時期の自己認識に焦点を当てて
- 統計資料から女性の健康を考える : 日韓の比較
- タイ人主婦の多重な役割とうつ状態に対する受容
- 既婚日本人女性看護職者の多重な役割と抑うつ状態に対する受容
- スムーズな分娩進行に向けて--助産師の役割--産婦の"気持ち"を尊重すること (特集 スムーズな分娩進行に向けて)
- 周産期母子保健指導における助産婦の役割 (特集 周産期の母子保健指導--母性編)
- 090 乳頭・乳房トラブル発症と乳質の変化について(1)(Group14 乳房管理・母乳3,一般演題ポスター,第48回日本母性衛生学会総会)
- 更年期・閉経の受け止め方と更年期症状 : インドネシアP市と宮崎県T町の社会文化的比較
- 更年期女性の心身不調とその生活背景 : 自覚症状とライフイベントに対する負担度からみる
- 看護大学における英語のホームページの開設状況