遺伝子改変マウスを用いた神経ペプチドPACAPの in vivo 機能解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ターゲッティングする特定遺伝子を計画的に破壊したノックアウトマウスは,特定の遺伝子機能を個体レベルで解析できるので,生体機能研究のツールとして有用であり,ヒト疾患のモデルとして動物実験の資材にもなり得る.従来から,突然変異による遺伝的病態マウスや,DNAの受精卵へのマイクロインジェクションによるトランスジェニックマウスがin vivo研究に使用されてきているが,前者は,変異が偶然によっていることや,変異遺伝子の同定が困難であること,また後者は,遺伝子のランダムインテグレーションであることや,ドミナントネガティブ体が知られている場合などを除いて特定遺伝子の機能を低下させることが困難であるなどの制約がある.遺伝子ターゲッティングは,特定の遺伝子のみを“精密”に標的破壊する方法であり,それに伴う表現型をもとにした遺伝子機能の解析方法であると言える.マウスの遺伝子ターゲッティングによって,現在では,標的遺伝子導入(ノックイン)やコンディショナル·ターゲッティングマウスなど,特定遺伝子の発現が自在に調節される個体の作製も可能になっている.当研究室では,神経ペプチドPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)の機能解析を目的として,これまでにPACAPとその受容体のノックアウトマウスあるいはトランスジェニックマウスを作製している.それらの表現型の解析を通じて,PACAPの予測された機能とともに,予測外の機能も見い出された.また,遺伝的背景や非遺伝的(環境)因子がノックアウト表現型に及ぼす影響についても検討してきているので,本稿では変異マウスの作製の概略とそれらの表現型解析の経緯についてまとめ,実験技術の紹介としたい.一方,遺伝子ターゲッティングマウスを作製して解析する研究アプローチは既に広く普及しているものの,依然,時間と労力を要する点で比較的取り組みにくいのが現状である.したがって,導入する変異のデザイン,得られたマウスの表現型の解析方法,胎生致死などの問題が発生する可能性等,種々の要因を考慮し予測することが重要であると考えられる.本稿では,これらの点についても著者らの経験をもとにまとめてみた.
- 2003-11-01
著者
-
新谷 紀人
大阪大学大学院 薬学研究科 神経薬理学分野
-
橋本 均
大阪大学 大学院薬学研究科神経薬理学分野
-
橋本 均
大阪大学大学院薬学研究科神経薬理学分野
-
橋本 均
大阪大学大学院薬学研究科神経薬理学
関連論文
- マウスメタンフェタミン誘発行動感作への前頭葉セロトニン神経系の関与
- 膵臓β細胞におけるPACAP過剰発現マウス : インスリン/グルコース恒常性維持における急性および長期作用
- 遺伝子改変マウスを用いた神経ペプチドPACAPの in vivo 機能解析
- 89 プロスタサイクリン受容体タンパク質の構造研究 : 光親和性標識法による分子量の同定(口頭発表の部)
- Prepulse inhibition 障害モデルマウスに対するガランタミン、ドネペジルの作用
- 精神疾患のトランスレーショナルリサーチ—統合失調症—
- 中枢神経系におけるトリメチルスズの作用(誌上シンポジウム)
- PACAP遺伝子欠損マウスの異常行動発現における環境因子の役割
- PACAP受容体
- 統合失調症関連因子とPACAP (あゆみ 生理活性ペプチド研究の新展開--機能解析から治療応用まで)
- ウアバインによる培養アストロサイトNa, K-ATPaseアイソフォームα1、β1の選択的誘導
- 培養アストロサイトカルシウムパラドックス障害におけるNa^+-Ca^交換系の役割
- 遺伝子欠損マウスを用いた Apelin-APJ シグナルの機能解析
- ミトコンドリアダイナミクスの生理・病態的意義
- 統合失調症の分子病態と神経ペプチドPACAP
- ニューロペプチドPACAPと精神神経機能 : 変異マウスからの予想外の知見
- 神経ペプチドPACAPの生理機能
- PACAP遺伝子欠損マウスが示す強制水泳試験における表現型異常
- 虚血性疾患治療を目指した最新トランスレーショナルリサーチ (生体機能と創薬シンポジウム2008--生命システムにおける情報ネットワークの重要性を解く 講演要旨集) -- (シンポジウム 慢性・難治性疾患治療を目指した最新のトランスレーショナルリサーチ)
- 遺伝子改変マウスの表現型解析法 : SHIRPA一次スクリーニング法
- 若者 薬学部6年制教育について
- Class B GPCR シグナリングの機能解析 : 神経ペプチドPACAP欠損マウスの表現型
- PACAP遺伝子欠損マウスの脳機能変化
- 神経ペプチドPACAP遺伝子欠損マウスの中枢機能異常
- 11.マウス胃底部輪走筋の持続性弛緩のメディエイター
- PACAP欠損マウスにおける精神行動変化
- PACAP欠損マウスのモノアミン神経機能調節薬に対する反応性変化
- 音刺激驚愕反応装置を用いた pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide (PACAP) 遺伝子欠損マウスの表現型解析
- 遺伝子改変マウスを用いたPACAPのインスリン分泌調節
- 遺伝子改変動物における精神運動興奮薬の感受性変化 : PACAP遺伝子欠損マウスにおける中枢神経作用薬の反応性
- ひよっこ助手,考える(GERNMINATION)
- PACAP遺伝子ノックアウトマウスにおける精神行動の異常
- PAC_1受容体およびPACAP遺伝子ノックアウトマウスの創出とその薬理学的解析
- 「The 13th Korea-Japan Joint Seminar on Pharmacology」に出席して
- トランスジェニックの新しい発現制御法
- ペプチド受容体のキメラによるリガンド結合領域に関する検討
- 神経ペプチドPACAPを標的とした精神疾患病態への分子遺伝学的アプローチ
- 神経ペプチドPACAPの分子薬理学的機能解析
- Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide(PACAP)受容体の構造および機能
- 神経系における下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)の生理的意義
- 遺伝子改変マウスを用いた神経ペプチドPACAPの中枢神経機能の研究
- ニューロペプチド PACAP による体内時計の調節機構
- ニューロペプチドPACAPの生理的役割とそのしくみ
- 薬理学と情報通信の技術革新
- グルタミン酸受容体の活性化による嗅覚の記憶の誘導
- エイコサノイド受容体cDNAのクローニング
- 精神疾患のトランスレーショナルリサーチ : 統合失調症
- PACAP欠損マウス-新しい精神機能障害モデル
- 神経ペプチドPACAPによる精神機能調節-精神疾患の創薬への展望