檜皮採取後のヒノキの木部形成と樹皮の厚さの回復状況
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概要
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重要文化財の木造建造物の一部では、ヒノキの樹皮である檜皮が屋根補修資材として必要不可欠である。一方、檜皮剥皮がヒノキの成長や材質に及ぼす影響を森林所有者が懸念していることが、資材の安定供給を妨げる原因のひとつになっている。しかし、檜皮剥皮がヒノキに及ぼす影響について詳細に報告されていなかった。剥皮試験を行った結果、剥皮された個体の約8割にあたる立木の胸高直径は剥皮後6年で剥皮前の胸高直径以上になった。この直径の回復をもたらした要因として木部の肥大成長と樹皮の厚さの回復が考えられる。剥皮試験開始前後の年輪幅に明らかな差異はなく、剥皮木と対照木間で試験開始後の年輪幅の増減は類似していた。剥皮すると、胸高部位の樹皮の厚さは剥皮していない地上高部分や対照木に比べ薄い傾向にあり、剥皮後10年経過しても同様であった。したがって、立木でみられた剥皮木の胸高直径の増加に、樹皮の厚さの回復が大きく影響しているわけではないことが分かった。Japanese cypress (Chamaecyparis obtusa) bark, hiwada is necessary material roofing a part of wooden buildings of Japanese nationally important cultural assets. However, hiwada has not been supplied stably. One of the reasons is that many forest owners fear deterioration in growth and wood quality caused by decortication for hiwada production. But the growth and wood property after decortication have not been evaluated in detail. We compared the growth of decorticated tree with that of untreated tree. The result in previous study showed that the diameters at breast height of 79 percent of the decorticated trees were more than those before decortication at six years later after decortication. We thought it was caused by radial growth in xylem and/or increase of bark thickness. No significant difference was found between ring width before and after the treatment. Also, the similarity of the fluctuations of ring width before and after the treatment was found between treated trees and untreated trees. The bark of decorticated part of tree was thinner than untreated part of same tree and untreated tree till 10 years later after the treatment. Thus, this study clarified that the increase of bark thickness did not mainly contribute the diameter increment of standing tree.
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