W4-6 多能性幹細胞由来樹状細胞を利用した自己免疫疾患の細胞治療療法
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概要
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我々は全身的な免疫抑制状態に陥らせることなく,免疫制御を誘導する手法の開発に取り組んでいる.そのための手段として樹状細胞を利用する方法について検討し,ES,iPS細胞より樹状細胞(ES,iPS-DC)を分化誘導する方法を確立している.今回,マウスES-DCを用いた自己免疫疾患モデルマウスの発症予防と治療研究を行った.1)発症予防研究:1型糖尿病モデルマウスである雌のNODマウス(4週齢,雌)にES-DCを複数回腹腔投与し,糖尿病の発症が抑制可能か検討した.その結果,糖尿病発症はES-DCの投与回数依存的に抑制され,脾臓細胞におけるTh1細胞の割合が低下していた.2)治療研究:6週齢の雌のC57BL/6マウスにMOGによるEAEを誘導し,尾部の麻痺を認めたEAE誘導10日目にES-DCの静脈投与を行い,以後の臨床症状について確認を行った.その結果,ES-DC投与群では投与を行わなかったマウスと比較し,臨床症状の改善が認められた.またES-DC投与群では総脊髄浸潤細胞の減少やTh1細胞数の減少,CD11bミ***イド細胞の減少を認めた.さらに静脈投与を行ったES-DCの体内分布を検討したところ,一部が脊髄にも移行していた.一方でES-DCは肺にその多くが分布しており,肺組織内におけるTh1細胞上のVLA-4の発現が低下していた.以上のような結果から,ES-DCは予防的にも治療的にも自己免疫疾患の制御に有効である可能性があり,ヒトiPS-DCを利用した将来的な治療法になりえる.
著者
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西村 泰治
熊本大学大学院医学研究科免疫識別学
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千住 覚
熊本大学大学院医学薬学研究部免疫識別学
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池田 徳典
熊本大学大学院生命科学研究部 免疫識別学分野
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高松 孝太郎
熊本大学大学院生命科学研究部 神経内科学分野
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