ニューレグリン受容体ErbBは小脳顆粒細胞において異なる神経活動下マイクロドメイン(リピッドラフト)に局在する
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概要
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ニューレグリン1-β1(NRG)は、統合失調症リスク遺伝子の一つであり、その受容体は、チロシンキナーゼファミリーの一つであり、膜貫通ドメインをもつErbB(ErbB2, 3, 4)である。NRG-ErbB情報伝達の異常が神経変性疾患や精神疾患を引き起こす。また、NRG-ErbB情報伝達は神経活動(神経の電気的活動)との関わりも強い。そこで、電気刺激の代替的刺激方法であるKCl刺激を用い、膜脱分極の程度を変えることにより,膜成分中のラフトの構成脂質や蛋白がどのように変動し、NRG-ErbB情報伝達にどのように影響を与える可能性があるかを調べた。脱分極具合が強いと思われる高濃度KCl刺激では、ラフト画分で、飽和脂肪酸を含むフォスファチジリルコリン(PC)が増加し、不飽和脂肪酸を含むPCが減少した。蛋白の構成としては、ErbB2, B4や、ErbB4と結合していると報告されているPSD95やNMDA受容体NR1サブニュトがラフト画分へ移動した。また、スフィンゴ脂質やコレステロールを枯渇した実験では、脱分極の度合いが小さい低濃度KCl刺激の時と似た現象が観察された。このことから、神経活動の度合いとラフト内脂質成分変化には何らかの関係があり、ラフト内の構成蛋白を変化させることにより情報伝達系に影響を与えている可能性が示唆された。
著者
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田口 良
東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻
-
大須 賀壮
阪大・院医・社会環境医学
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平林 義雄
理化学研究所
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大嶋 恵理子
理研・脳センター・神経膜機能
-
天沼 崇
早稲田オリンパスバイオサイエンス研究所
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大須賀 壮
理化学研究所・脳科学総合研究センター・平林研究ユニット
-
大嶋 恵理子
理化学研究所・脳科学総合研究センター・平林研究ユニット
-
尾崎 美和子
早稲田オリンパスバイオサイエンス研究所
-
平林 義雄
理化学研究所・脳科学総合研究センター・平林研究ユニット
-
田口 良
東京大学大学院医学研究科・メタボローム寄付講座
-
大嶋 恵理子
理化学研究所 脳科学総合研究センター 神経膜機能研究チーム
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