糸状菌のマルトース分解酵素に関する研究(第1報) : Aspergillus nigerのトランスグルコシダーゼの結晶化について
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概要
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Asp. nigerの1株の麩麹培養の抽出液より得られるマルトース分解酵素区分をアクリノール沈澱法,連続濾紙電気泳動法等の操作によって精製し,アミラーゼ作用を全く示さないトランスグルコシダーゼを結晶として単離した.この結晶は著者らが単離した当時,このような機作の糖転移酵素としては最初のものであると考えられた. この結晶は電気泳動分析やその他の実験結果から単一蛋白質とみなされた.従来トランスグルコシダーゼの活性発現にリボフラビン(14)やある種のcarbohydrate(15)の随伴が必須であるという報告がみられたが,著者らの得た結晶酵素についてはそれらの存在は否定された. この酵素はマルトースからグルコース以外に,主としてイソマルトース及びイソマルトトリオースを生じる事実から,主にα-1, 4 glucoside結合の分解に際して,α-1, 6 glucoside結合への転移を触媒するものと推定される,また,マルトースを基質とした場合の作用の最適pHは3.5, 30°に24時間保った際のpH安定範囲は2.0より7.0までであり, 15分間の加熱においては60°まで安定であることが認められた. なお,著者らがその存在の真否を吟味したいわゆる“真のマルターゼ”は,少なくとも著者の検索した範囲の糸状菌には存在しないものと考えられるに至った.またその後,従来そのような酵素の存在が報告されていた酵母,麦芽等についても検討したが,これらについてもその存在は否定せざるを得なかった.
著者
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