便秘を伴う卵巣原発甲状腺腫性カルチノイドの1例

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　卵巣原発カルチノイドはまれな疾患である．卵巣カルチノイドの症例報告はこれまで世界で約150例，本邦は約30例で臓器別発生頻度は約1%である．今回われわれは，便秘を主訴とする卵巣原発甲状腺腫性カルチノイドを経験したので報告する．　症例は，47歳，3妊2産．家族歴・既往歴に特記すべきことはない．数年前から便秘を認め，胃部不快感も伴うようになったため近医を受診し，腹部腫瘤を指摘され精査加療目的で当科を受診した．超音波検査で径約15cmの一部充実性部分を伴う右卵巣腫瘍を認め，MRI検査で奇形腫の悪性転化が疑われたことより開腹手術を施行した．腹水細胞診は陰性で，右卵巣が径15cm大に腫大しており表面は平滑，灰白色で一部暗青色を呈していた．両側付属器摘出術と単純子宮全摘出術を施行した．病理組織所見で，成熟奇形腫と正常甲状腺と類似し分化した甲状腺組織とカルチノイドを認め，カルチノイド成分にグリメリウス陽性細胞とぺプタイドYY陽性細胞を多数認めた．以上よりぺプタイドYY産生卵巣原発甲状腺腫性カルチノイドと診断した．　ぺプタイドYYは，36個のアミノ酸よりなる消化管ホルモンで，空腸・結腸の消化管運動を抑制する作用がある．近年，典型的なカルチノイド症候群ではなく便秘を認める症例で，ぺプタイドYYの関与が指摘されており腫瘍摘出後速やかに便秘が解消するとされている．本症例でも腫瘍摘出後，一過性下痢の後便秘が解消したことより，卵巣カルチノイドからぺプタイドYYが産生され便秘を惹起していたと考えた．便秘を主訴とする充実性卵巣腫瘍の場合，卵巣カルチノイドを鑑別診断の1つに挙げることが必要である．〔産婦の進歩56（3）：287-292，2004（平成16年8月〕

便秘を伴う卵巣原発甲状腺腫性カルチノイドの1例

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