冬季の気温が落葉果樹の休眠におよぼす影響 (第6報) : モモ, ナミ, ブドウおよびカキの休眠の完了に必要な低温量
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1.本実験はモモ(岡山早生),ナシ(八雲),ブドウ(デラウエア)およびカキ(平核無)について,冬季の休眠完了に必要な低温要求量を比較するために行なつた。すなわち,1956年11月20日から1957年1月27日までの間6〜11°Cの準備室においた材料を,1月20日から逆算して種々の期間(5〜40日), -1〜0°Cおよび-7°Cの低温に人為的にあわせ, 1月28日から18〜21°Cに加温した場合の発芽および新梢の伸長状況を観察した。 2.その結果,処理温度が-1〜0°Cの場合には, 1月20日から逆算して,モモには25〜30日,ナシには25日,ブドウには20〜25日,カキには5〜10日の低温処理が,最も多数の芽を早期に揃つて発芽させ,しかも新梢の伸長をいちじるしく促がし,この傾向は特に頂部のものではなはだしかつた。しかし,処理温変が-7°Cになると,枝梢や芽の凍死するものが多く,モモやナシではたとえ発芽が促進されても,その後に新梢の伸長が抑えられ,ブドウやカキでは発芽,伸長共に不良で,処理の効果が十分に認められなかつた。 3.ナシやブドウ,カキでは低温(-1〜0°C)処理のいかんにかかわらず,つねに樹冠上位の芽の伸長量が樹冠中下位の芽の伸長量より優れたが,モモでは無処理の場合にこの関係が逆であつた。また,低温処理によつて,4種とも樹冠上位の芽の伸長がより優れたが,その低温処理の効果はモモにおいて最も大であつた。このことはモモの低温要求量がナシやブドウ,カキよりも多いために樹冠上位の芽が休眠を完了しえないためと思われる。 4.高知の海岸地帯では,モモには展芽開花の遅滞不揃い,生育不振,叢生化現象が,ナシには展芽開花の遅滞不揃いが見られるが,ブドウやカキには異常が認められない。このことはこれら4種の低温要求量の差を示すものと思われ,この地方の冬季の気温がモモやナシにとつて,やや高過ぎると思われる。
著者
関連論文
- 冬季の気温が落葉果樹の休眠におよぼす影響 (第6報) : モモ, ナミ, ブドウおよびカキの休眠の完了に必要な低温量
- 早期落葉が落葉果樹の生育に及ぼす影響 (第1報) : 摘葉時期とモモ幼樹の生育
- 冬季の高温が落葉果樹の休眠におよぼす影響(第5報) : 冬季の昼温がモモおよびカキの春季の発芽におよぼす影響
- カンキツ類の寒害 (第5報) : 低温遭遇に伴う温州ミカンの枝葉の細胞浸透圧ならびに体内成分の変化と耐凍性の増大との関係
- カンキツ類の台木に関する研究 (第3報) : 地温と実生の生育
- カンキツの寒害(第3報) : 二, 三の凍結および融解処理と樹体の寒害発生との関係
- カキ果のタンニン (第2報) : 脱渋と揮発性物質
- 冬季の気温が落葉果樹の休眠に及ぼす影響(第3報) : 冬季の低温遭遇時期がモモ及びカキの幼樹の春季の展芽伸長に及ぼす影響
- 冬季の気温が落葉果樹の休眠に及ぼす影響(第1報) : 冬季が寒冷,温暖,高温な場合の柿,桃,梨幼樹の春季における展芽伸長について