カンキツの寒害(第3報) : 二, 三の凍結および融解処理と樹体の寒害発生との関係
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概要
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1) 初冬からガラス室内においたカラタチ台温州および夏ミカンの苗木を2月上旬に, 冷蔵庫内で-7°Cまで徐々に温度を下げて凍らせた。つぎにこれらの凍結樹を陽光のよくあたる圃場(13.5°C), または, 暖かい部屋(13.5°C)におき融解させたが, 低温下で徐々に融解させたものに比べて, 外観的にはいちじるしい差違がなかつた。しかしその後に, 各区の間で生長量に差を生じ, 直射日光をうけたものの生長が最も劣つた。2) 1月から加温ガラス室においた材料を3月上旬に, 毎夜5日間続けて冷蔵庫内で-5°Cまで徐々に冷却し, 昼間は日当りにおいた。その結果, 日ごとに凍結開始温度が高くなり, かつ凍結葉量が増した。とくに, 4, 5日間凍らせたものでは, 融解したあと, 葉がいちじるしく萎凋し, 灌水しても落葉が多く, 春季の生育が劣つた。この傾向はとくに夏ミカンではなはだしかつた。3) 12月から加温ガラス室でじゆうぶんに灌水して育つた材料と灌水をひかえて育てた材料を, 翌年の2月上旬に5日間続けて, 夜間に-5°Cまで冷却して凍らせ, 昼間に日当りに出した。その結果, 灌水をひかえたものはじゆうぶんに灌水したものにくらべて, 高い温度で凍りはじめ, かつ凍結葉量が多く, とけてからの萎凋の回復がおくれた。4) 夜間に凍らせた樹と凍らせなかつた樹の蒸散量を比べたのに, 前者では蒸散量がふえ, 葉の含水量が減つた。処理が4〜5日も続くと蒸散量で当初の1.3〜1.4倍, 葉の含水量で当初の65%になつた。
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