早期落葉が落葉果樹の生育に及ぼす影響 (第1報) : 摘葉時期とモモ幼樹の生育
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概要
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1. モモ樹の生長期間中の不時の落葉が樹体の生長, 生殖両作用に及ぼす影響をみるために, 1959年の6月〜10月の間の各月の7日と22日に, 鉢植の幼樹について, 全葉を人為的に摘除し, その影響を2か年にわたって観察した。2. 一般に, 摘葉後に再び発芽するが, 摘葉時期がおくれるほど, 発芽数は減少し, かつ, 発芽所要日数は多くなり, 10月摘葉樹では全然発芽しなかつた。再発芽したものは, 秋枝が晩くまで伸び, 落葉期が30〜55日もおくれた。翌春の発芽期もおくれて不揃いで, かつ, 発芽数が少なく, その傾向は8月7日摘葉樹で最も著しかつた。3. 6月および7月の摘葉樹には全然花芽が着かず, 8月摘葉樹には花芽状のものが, 9月以後の摘葉樹には完全な花芽がみられた。概して, 摘葉時期が早いと翌春の開花数が減少し, 開花が著しく不揃いとなつた。ただし, 9月上旬の摘葉樹では10月中旬に返り咲きした。8月摘葉樹では翌春にはなはだしくおくれて, ごく少数の異常花が咲いた。4. 摘葉した年の枝の伸長は一般に良好で, 7月摘葉樹だけがやや劣つた。しかし, 摘葉樹の翌年の枝の伸長は10月摘葉樹を除いて, 極端に劣つた。さらに, 根の伸長期である7月〜8月上旬に摘葉すると, 根の生育が著しくおさえられた。5. 以上のことから, 高知県ではモモ樹 (岡山早生, 1年生) の花芽の分化が8月の末には完全に終つており, 9月中〜下旬には花芽が, 9月末には葉芽が自発休眠に完全に入つたことが明らかである。自発休眠に入るまえに葉がなくなると, 夏, 秋枝を発生して落葉がはなはだおくれ, 翌春には休眠覚醒の遅延の兆候が見られて樹の発育が一層悪くなる。
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