ブドウ‘巨峰’の着色とアントシアノプラストの発達
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概要
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1. ‘巨峰’では果房に着色が認められてから1週間後, ‘紅伊豆’では同4日後に着色した果皮の表皮細胞内に着色小球体を認め, Pecket と Small の赤キャベツにおける記載に従って, その呼称をアントシアノプラスト(ACPと略記) とした.2. ‘巨峰’では, 細胞当たりACPの数はその出現始めに12個, その後最大27個まで増加した. しかし果房が黒紫色に変わる10月10日以降, それらのうちの1個が急速に肥大して赤色から黒色に変化し, 収穫時の10月20日には果皮表皮細胞の最大直径の約1/2に達した. 一方, ACPの数は細胞当たり1〜2個に減少した. また, 同時に果皮のアントシアニン含量が急速に増加した.3. ‘紅伊豆’では, 細胞当たりACPの数は, 出現当初の7個から最大18個に達したが, 収穫時には6個に減少した. また, 最大ACPの直径は当初‘巨峰’の約1/3, 収穫時においても約1/2, 表皮細胞の最大直径の約1/5で, 色は終始赤色のままであった. 果皮のアントシアニン含量は‘巨峰’に比較してきわめて少なかった.4. 果粒重, 果粒硬度並びに果粒糖度はいずれも, ACPの出現以降, ‘巨峰’と‘紅伊豆’との間で大きな違いはなかった. また, ‘巨峰’では10月10日以降1個のACPが急速に肥大したが, それに伴う糖度の増加は認められなかった.5. 肥大した黒色のACPは検鏡中自然に破裂するものが観察されたが, その際, 内容物が液胞 (細胞) 内に流出し, 液胞 (細胞) 全体が赤色に染まった.6. 以上の結果, ‘巨峰’の成熟に伴う黒紫色への着色の変化は, 単に液胞内に多量のアントシアニンが蓄積する結果ではなく, むしろアントシアニンを濃く濃縮したACPの形成•肥大によるものであり, また‘紅伊豆’においてもACPの形成•肥大が着色の濃淡に関係するものと考えられた.
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