自家不和合性ニホンナシにおける先端異常花粉管の誘発とその形態的特性

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ニホンナシの和合ならびに不和合受粉において, 花柱内にみられる異常な先端をもった花粉管 (主として肥大) の発生を調査するとともに, 数種の物質を加えた人工培地上での発芽花粉における花粉管の先端異常の発生を検討した. 不和合花柱内での肥大した先端をもった花粉管数は,和合花柱内の約2倍であった. また, 異常花粉管の表面は凹凸や不規則な溝が見られたが, 正常な花粉管では比較的滑らかであった. 花粉管生長促進物質であるCaCl2は花粉管の先端異常の発生には影響せず, 花粉管の先端の表面構造は滑らかであったが, H3BO3 は先端肥大を促進し, その表面には縦方向の溝が多数見られた. しかし, 後者で見られた肥大した先端は比較的円形に近い規則的なものであり, 溝も不和合花粉管のものとは異なって規則的であった. 花粉管生長抑制物質である子房抽出液, フシコシン,ABAおよび水ストレスを与えるポリエチレングリコールは先端異常花粉管の出現を促進し, それらの表面構造は不和合受粉で多く見られる花粉管の異常と類似していた. 以上の形態的特性より, 不和合の拒絶反応 (特異的な認識反応後に生じ, 実際に花粉管生長を抑制すると考えられる反応) には, 植物体内に広く分布する抑制物質やストレスが関与している可能性を示唆された.
園芸学会の論文

自家不和合性ニホンナシにおける先端異常花粉管の誘発とその形態的特性

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