雪面における昇華蒸発と輻射
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概要
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雪面における昇華を左右する要因としては, 温度・風速・雪面付近の水蒸気圧勾配・雪面の構造等が考えられる.輻射の照射の強弱は, このうちの温度と水蒸気圧勾配の条件を, 速やかに, そして能率的に左右するものである.こういう意味で, 照射する輻射の強弱と, 昇華速度との関係を求めれば, 温度と水蒸気圧勾配との関係を求めることと同じことになる.また, 輻射は, 雪面における熱収支の実験では, その条件を, 容易に大きく変化させるための手段となり得るものであり, そのようなことは実際の野外でも起っていることである.このような観点から, 気温-15℃, 湿度54~57%の低温室内で, 密度0.39~0.41 (g/cm<SUP>3</SUP>), 粒径0.42mm以下の雪を使い, 雪面からの昇華速度と, 輻射強度との関係を低温室内で求めた.<BR>なお, 輻射源として陽光ランプを使用したが, これによれば, 簡単に, 天然昼光と, ほとんど等しいエネルギー分布で, しかも強い輻射が得られる.<BR>次に, 測定された結果を記す.<BR>1.輻射の増加につれ, 昇華速度はやや急速に増す.<BR>2.昇華量から輻射ゼロのときの昇華量を差し引いた値, すなわち, 輻射昇華速度は風速に関係しない.<BR>3.輻射昇華熱比η= (輻射昇華熱/吸収輻射熱) ×100の値と輻射強度<I>R</I>との関係は, η∝<I>R</I><SUP>1/<I>n</I></SUP>という式の型で表わされる.<BR>4.雪面の温度は輻射強度に比例して増す.<BR>5.熱伝達係数の値は風速に比例して増す.<BR>なお, 比較のために輻射源として電球と電気コンロを使用して, 全く同じ測定を行なった.その場合の輻射の増加による昇華速度の増大はきわめて急速となったが, その変化の傾向は, 陽光ランプ (天然昼光) の場合とほとんど同じであることがわかつた.
- 社団法人 日本雪氷学会の論文
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