Procainamideおよびquinidineの長期投与後に発症したSLE様症候群の1例
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概要
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Procainamideとquinidineにより誘発されたと考えられるSLE様症候群の1例を報告する.症例は38歳の女性で,昭和59年より原因不明の心室性不整脈が頻発し,抗不整脈剤のquinidineとprocainamideの投与を開始されたが,昭和63年より朝のこわばり,筋肉痛,筋力低下が出現し歩行困難となり,昭和63年8月,当科入院.入院時,全身の筋肉痛が顕著で右眼の強膜炎も認めた. Hb8.7g/dl, WBC3,200/mm3, Thrombo. 10.7×104/mm3と汎血球減少を認め,血沈は132mm/hと著明に亢進し, γ-globulinも26.0%と増加, CPK, alddaseなどの筋原性酵素も増加していた.また, lupus anticoagulantが陽性で, LE-testおよびLE細胞も陽性であった.抗核抗体は, 5,120倍と上昇し,その染色パターンは,主にhomogeneous typeであり,胸線由来の精製ヒストンを用いたwestern blottingにて,ヒストンのH1, H2B, H2Aと強く反応するIgG抗体を認めた.その他, PAIgG,抗ssDNA抗体が陽性であった.薬剤誘発SLE様症候群を疑い, quinidine, procainamideをただちに中止するも,自・他覚症状が改善しないため,入院1ヵ月後より, prednisolone 40mg/dayの投与を開始した.投与開始後,著明な自覚症状の改善を認めたが, prednisolone漸減中に, SLE様症状が再燃し,検査所見が正常化するまでに, 6ヵ月以上にわたるprednisoloneの長期投与が必要であった.そのため,自然発症SLEとの鑑別が問題となったが, procainamide, quinidine投与開始前には, SLEを疑わせる異常所見はまったく認めず,また,自己抗体のパターンなども, quinidineおよびprocainamide誘発SLE様症候群の特徴を兼ね備えており,両薬剤により誘発されたSLE様症候群と診断した.
著者
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土屋 喜裕
北九州市立門司病院内科
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中村 稔
北九州市立門司病院内科
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大島 道雄
北九州市立門司病院内科
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石丸 敏之
九州大学第1内科
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大久保 英雄
北九州市立医療センター
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下野 信行
九州大学第1内科
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