上顎癌における放射線照射と眼障害
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概要
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目的:上顎癌の治療は,近年その治癒成績の向上に伴なつて,機能•形態を保存する治療法開発の傾向にある.しかし上顎癌に対する放射線照射後に生ずる眼障害は少なくない.なかでも,ある一定の期間をおいて発現してくる視力障害は,進行性,不可逆性のものが多いだけに社会復帰上きわめて重視さるべき問題である,本研究においては,照射終了後の眼障害の実態を把握するとともに,その障害を防止する対策に資する目的で,臨床例26例を対象として諸種の因子について検討を加えた.結果:1) 眼の各部位における病変についてみると,前眼部病変は角膜白斑4例,表層角膜炎,角膜潰瘍,眼球萎縮各1例;中間透光体病変は老人性白内障7例,放射線白内障4例,眼球萎縮,硝子体剥離,併発白内障,原因の判別不能の白内障各1例;眠底病変は放射線網膜症4例,視神経萎縮,眼球萎縮各1例であり,これらの中明らかに放射線による病変と確認したものは26例中7例(27%)である.その内訳は放射線白内障3例,放射線網膜症3例,両者合併するもの1例である.2) 放射線白内障は照射後1年以上経た例に認められ,経過年数がたてばたつ程増加の傾向を示す.また,照射量が多い例に好発し,特に5,000rad以上の照射例ではその発生頻度は高い.ライナック照射より60Co照射において発生頻度が高いのが特徴的である.3) 放射線網膜症は放射線白内障同様1年以上経過例に認められ,全例ライナック照射例である.照射量に関しては放射線白内障が照射量の多い例に好発しているのに比し,比較的少ない照射量においてもその発生を認めている.4) 社会復帰という観点に立ち,視機能障害の有無を弱視の線に引き,各病変にもとづく障害を検討すると,機能障害を認めたものは26例中12例,46%である.このうち放射線照射に起因するものは4例であり,全症例中照射に起因する機能障害例は26例中4例,15%である.機能障害は発現していないが,螢光眼底撮影法により,放射線網膜症と診断されたものが3例あり,その機能の推移については今後経時的な観察が必要である.
著者
-
平野 実
久留米大学
-
三橋 重信
久留米大学医学部耳鼻咽喉科
-
岡田 正直
久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室
-
市川 昭則
久留米大学耳鼻咽喉科学教室
-
吉岡 久春
久留米大学医学部眼科学教室
-
吉岡 久春
久留米大学眼科学教室
-
木原 秀司
久留米大学眼科学教室
-
市川 昭則
久留米大学医学部耳鼻咽喉科学教室
-
三橋 重信
久留米大学
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