薬物の毒性評価のためのマウス受精卵のIn vitro培養 : (2)マウス卵細胞の染色分体分染法の開発
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概要
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マウスの培養受精卵を用いて,薬物の毒性評価法を確立するために後期胚盤胞(Late blastocyst: LB)における卵細胞の染色分体の分染を試みた.方法は5-bromodcoxyuridine(BrdU)を加えた培養液内で桑実胚をLBまで発育させた後,染色体標本を作製した.標本は染色分体を分染するためにHoechst33258で染色し,光照射の後,Giemsa染色を行った,照射光源としては蛍光灯(15W),紫外線灯(20W),水銀灯(400W)の3種類を使用した。これらの光源による染色分体の分染に対するBrdUの最少有効濃度を比較した.分染は水銀灯を用いたときに最も低いBrdU濃度で可能であったが,過度の照射や温度の上昇は分染阻害を来すことが判明した.次にBrdUのLBへの影響について検討した.LBでは1ng/mlの濃度で細胞数は若干増加したが,3〜100ng/mlの濃度下では殆んど変化が認められなかった.また,細胞の分裂指数はいずれの濃度においても変化しなかった.従って,BrdUは受精卵細胞の分裂遅延作用をこの濃度域では発現していないと考えられた.染色分体交換(Sister chromatid exchange: SCE)の頻度は3〜30ng/mlの濃度で安定した頻度を示し,この発現傾向は他の培養細胞での報告と類似した,LBでのBrdUの分染濃度はいずれの培養細胞での濃度よりも低濃度であり,また,SCEの頻度は他の培養細胞での報告と同等か,または低い頻度を示した.マウスの受精卵の染色分体の分染法としてのBrdUは3〜30ng/mlで処理し,照射は水銀灯を用いたときにSCE頻度に影響しない最適条件が得られることが判明した.この方法を用いて,薬物の受精卵に対する影響をその発育率,LBの細胞数,分裂指数およびSCEの頻度を指標として現わした.これは薬物の遣伝的変化についての情報を得ることが可能であり,培養下で薬物の毒性を短期間に評価する有効な手段になり得ると考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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