ImidaprilのアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害作用に関する研究(II) : ―ex vivoにおける各種組織ACEに対する作用―
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概要
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新規ACE阻害薬imidaprilの成熟自然発症高血圧ラット(SHR)における降圧作用機序を血清,胸-腹部大動脈,肺,腎臓,心臓,脳のACE阻害との関連から検討した.まず,組織のACE活性について調べたところ,SHRでは正常血圧ラット(NTR)同様,肺および大動脈のACE活性は他組織のそれより高かった.また,SHRはNTRより大動脈,心臓,脳でACE活性が有意に高く,肺でやや高く,血清,腎臓で有意に低かった.SHRにおいてimidapril(2mg/kg/day)1カ月間連続経口投与の初回投与時,脳以外のACE活性は投与1〜6時間後を最大として80%以上阻害され,血清,肺,では投与6時間後から48時間後にかけて最大阻害から40〜50%阻害への回復がみられたが,大動脈においては最大阻害が,腎臓,心臓においては60%近い阻害が,投与6時間後から48時間後まで持続した.最終回投与後では脳のACEも阻害されていたが,強力な阻害の認められたのは血清,大動脈,肺で,投与48時間後まで阻害の認められたのは大動脈,肺,脳であった.一方,初回投与時の血圧は6時間後まで次第に下降し,投与24時間後に若干回復する推移を示した.両時点の降圧程度は1カ月間連続投与後においても初回投与時のそれと同程度であり,投与48時間後においても降圧傾向が認められた.血圧推移とよく相関するACE活性阻害推移を示す組織は初回投与時には血清,肺であり,連続投与終了時には肺,腎臓,心臓であった.NTRの脳以外のACE活性も正常血圧には影響しないimidapril(0.5mg/kg)の単回経口投与により,強力かつ持続的に阻害された.imidaprilとエナラプリルはほぼ同程度のACE活性阻害,阻害持続を示したが,大動脈,肺および血清での阻害強度はimidaprilのほうがやや強く,またSHRにおける降圧効果も強い傾向を,持続も長い傾向を示した.以上より,昇圧進展後のSHRにおけるimidaprilの降圧効果は血清ACE阻害のみでは説明できず,肺や血管のACE阻害の寄与が大きいものと推察された.これらは退薬後の降圧効果にも寄与しているものと考えられるが,降圧効果の減少している時点での大動脈における強く持続的なACE阻害効果との関係は不明である.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
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渡辺 泰三
田辺製薬(株)応用生化学研究所
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美濃部 敏
田辺製薬(株)応用生化学研究所
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山村 道夫
田辺製薬(株)医薬育成研究所
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松岡 雄三
田辺製薬(株)医薬育成研究所
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橋本 善勝
田辺製薬(株)薬理研究所
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久保 雅己
田辺製薬(株)応用生化学研究所
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菅谷 健
田辺製薬(株)応用生化学研究所
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松岡 雄三
田辺製薬(株)薬理研究所
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山村 道夫
田辺製薬(株)薬理研究所
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