Nicergolineに関する薬理学的研究(第I報) 低酸素性脳障害に対する保護作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
実験的な低酸素性脳障害に対するnicergolineの作用をdihydroergotoxine(DHE)およびphentolamine(PTA)と比較検討した.1) マウス減圧致死に対してnicergoline(16 mg/kg, i.p.)は保護作用を,DHEおよびPTAは増悪作用を示した.2) マウスKCN致死に対してnicergoline(1〜16 mg/kg, i.p.および16〜64 mg/kg, p.o.)はDHE同様に用量依存的な保護作用を示したが,PTAは本作用を示さなかった.3) KCN低酸素時のラット脳波平坦化に対してnicergoline(8〜128 μg/kg, i.v.)は著明な軽減・阻止作用を発現し,その効力はDHEより10倍程強かった.一方,PTAは本作用を示さなかった.4) nicergoline(1〜16 mg/kg, i.p.)はDHE同様に非致死量のKCN処置時の神経症状に対して回復促進作用を示した.また本薬はKCN低酸素時マウス脳エネルギー代謝障害に対しても用量依存的な改善作用を示した.5) KCNによる脳チトクロームナキシダーゼ活性阻害に対してnicergoline(100 μM)はDHEより強い拮抗作用を示したが,PTAは拮抗作用を示さなかった.6) なお,マウスadrenaline致死に対するnicergoline,DHEおよびPTAの保護作用のED50はそれぞれ1.18,0.27および0.35 mg/kg(i.p.)であった.7) これらの成績から,nicergolineの低酸素性脳障害に対する保護作用は,α-受容体遮断作用とは関連せず,むしろ脳チトクロームオキシダーゼ活性賦活作用による脳エネルギー代謝障害改善作用に基づくものと考えられた.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
新冨 敬一
田辺製薬株式会社安全性研究所薬理生化学部門
-
松岡 雄三
田辺製薬(株)医薬育成研究所
-
新冨 敬一
田辺製薬(株)安全性研究所
-
吉本 謙一
田辺製薬(株)安全性研究所
-
江郷 秀世
田辺製薬(株)安全性研究所
-
田中 隆司
田辺製薬(株)安全性研究所
-
板倉 正
田辺製薬(株)安全性研究所
-
松本 守
田辺製薬(株)安全性研究所
関連論文
- 正常マウスの脳エネルギー代謝に対する Nicergoline の作用
- 新規TRH類縁体,(-)-N-[(S)-hexahydro-1-methyl-2,6-dioxo-4-pyrimidinylcarbonyl]-L-histidyl-prolinamideのラット血中ホルモン濃度に及ぼす影響
- Nicergolineに関する薬理学的研究(第III報) : 脳および末梢循環に対する作用
- Nicergolineに関する薬理学的研究(第I報) 低酸素性脳障害に対する保護作用
- Nicergolineに関する薬理学的研究(第II報) : 虚血性脳障害に対する保護作用
- ImidaprilのアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害作用に関する研究(II) : ―ex vivoにおける各種組織ACEに対する作用―