脳機能改善薬アニラセタムの薬物依存性について
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概要
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2-pyrrolidinone系誘導体である脳機能改善薬アニラセタムは,比較的大量投与しても運動機能および自律神経系に影響を及ぼさず,比較的少量の投与により抗健忘作用,学習機能改善作用を有する薬物である.アニラセタムの胃内経路における薬物依存性について,雄性カニクイザルを用い,まず急性中枢作用を検討し,続いて留置カテーテルを経由する投与経路により,精神依存性試験として自己摂取開始能試験ならびに身体依存性形成能試験を実施し検討した.自己摂取開始能試験における各薬物の初回単位用量について,被験薬物であるアニラセタムは,臨床用量の約2倍,すなわちカニクイザルを用いた遅延見本合わせ試験の有効量に当たる25mg/kg/injectionを,また対照薬物であるd-メタンフェタミンおよびコカインについては,中枢神経作用を示す最小用量の1/3用量であるそれぞれ0.03および3mg/kg/injectionとし,それぞれの初回単位用量について2週間試験し,以後用量を逐次増加し自己摂取開始能の有無について検討した.一方,身体依存性形成能試験における被験用量について,アニラセタムは臨床用量の約4倍の50mg/kg/injection,ペントバルビタールについては,中程度の中枢神経抑制作用を示す25mg/kg/injectionとし,それぞれ1日2回31日間強制胃内投与し,続く1週間の休薬期間における禁断症状を観察した.自己摂取開始能試験において,アニラセタム(25〜50mg/kg/injection)群では,4例全例に著しい自己摂取能は認められなかった.なお,25mg/kg/injectionにおいて試験開始初期,4例中1例に有意だが低いレバー押し反応が認められたが,以後反応数は減少し用量を50,75mg/kg/injectionに増加しても反応数は低く,用量依存性もなかった.d-メタンフェタミン(0.03〜0.3mg/kg/injection)群では,0.03mg/kg/injection群の4例全例に自己摂取行動はみられず,0.1mg/kg/injection群の4例中1例に軽度だが安定した自己摂取が認められ,続く休薬期間において休薬直後より1週間にわたりレバー押し反応数の著しい増加がみられた.コカイン(3,10mg/kg/injection)群では,3mg/kg/injection群の5例全例に自己摂取行動はみられず,10mg/kg/injectionにおいて5例中3例(2例に著しく)に自己摂取行動が認められたが,その後3例全例が死亡した.身体依存性形成能試験において,薬物連投(31日間)後の休薬期間(1週間)における禁断症状の有無を観察したところアニラセタム(100mg/kg/day,i.g.)群では,1週間の休薬期間において何ら禁断症状は観察されず,餌摂取量および体重にも変化は認められなかった.ペントバルビタール(50mg/kg/day,i.g.)群の6例全例に,落ち着きなさ,発揚あるいは四肢振顫等の禁断症状,ならびに身体依存形成を示す餌摂取量の減少傾向および有意な体重減少が観察された.以上の結果から,アニラセタムに自己摂取開始能および身体依存性形成能は無いと考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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