ポリ塩化ビフェニール(PCB)によるマウス,ラット肝ミクロゾーム酵素誘導と組織中PCB量の関連について
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概要
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カネクロール(KC)300,400,500,600,(塩素含量はそれぞれ43,48,55,61%)をマウス,ラットに1回投与しpentobarbitalによる睡眠時間,肝ミクロゾームヘム蛋白質含量,組織中のPCB量あるいはそのガスクロマトグラムパターンの変動などにおよぼす影響を検討した.各カネクロールを1回経口投与しpentobarbitalによる睡眠時間を測定すると,投与初期には睡眠延長作用があるが,時間経過にしたがって睡眠短縮作用となり二相性の変化を示した.初期の睡眠延長作用はマウスに強く現われ,塩素数の少ないKC-300が最も強い変化を示した.睡眠短縮作用はラットで強く,塩素数の多いカネクロールほど強い作用を示した,これらの睡眠時間におよぼすPCBの影響には種差,系統差のあることが考えられる.ラットにおける睡眠短縮作用あるいはチトクローム(Cyt.)P-450含量の増大は塩素数の多いカネクロールほど長く続くが,投与初期では塩素数の多少にかかわらず同じ程度の変化を示す.カネクロール投与により誘導されるCty.P-450は,CO-差スペクトルで448nmに極大値を有する.またCyt.b<SUB>5</SUB>含量の増大はCyt.P-450の場合と変化が異なり,極大値に達する時間が遅れる.KC-500をラットに1回経口投与した場合の組織中への移行は,投与後8時間前後までは肝臓に高濃度検出されるが,それ以後は脂肪中の濃度が高くなる.脂肪中のPCB濃度は,酵素誘導作用と相関性を示し,塩素数の多いカネクロールほど高い値を示した.ラットにおける組織中PCBのガスクロマトグラムから,保持時間の長いピークほど体内への吸収がよく,また長く残留する.クロマトグラム上のピーク15の成分は,体内からの消失速度が早い,マウスの睡眠延長あるいはラヅトの睡眠短縮作用における経口と腹腔内投与の比較では,経口投与の方がどちらの変化も早く現われ,経口的なPCBの肝臓への移行の早いことを示す.
著者
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島田 力
大阪府立公衆衛生研究所
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島田 力
大阪府公衛研
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岩上 正蔵
大阪府立公衆衛生研究所
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布浦 由樹
大阪府立公衆衛生研究所
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水田 泰子
大阪府立公衆衛生研究所
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北中 英良
大阪府立公衆衛生研究所
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