天然由来物質バイカレインによるmitogen-activated protein kinase(MAPK)カスケードの抑制
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概要
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黄岑に含有する活性物質のひとつであるバイカレインの作用について,C6ラットグリオーマ細胞を用いて検討した.バイカレインはヒスタミンによるプロスタグランジンE<SUB>2</SUB>(PGE<SUB>2</SUB>)生成を用量依存的に抑制した.Ca<SUP>2+</SUP>イオノフォアであるA23198によるPGE<SUB>2</SUB>生成をもバイカレインは抑制するので,その作用点はCa<SUP>2+</SUP>上昇よりも下流であると考えられた.細胞質ボスホリパーゼA<SUB>2</SUB>(cPLA<SUB>2</SUB>)リン酸化して活性化することの知られているmitogen-activated protein kinase(MAPK=ERK)のp42<SUP>MAPK</SUP>およびp44<SUP>MAPK</SUP>は,ヒスタミンやA23187で細胞を刺激することによりリン酸化された.このリン酸化をバイカレインは用量依存的に抑制した.MAPKをリン酸化して活性化するMAP kinase(MEK)のリン酸化もヒスタミンやA23187によってもたらされたが,そのリン酸化もバイカレインによって抑制された.MEKを抗体を用いて免疫沈降させ,MAPKを基質としてin vitroでキナーゼアッセイを行ったところ,そのリン酸化反応はバイカレインでもMEK阻害薬のPD98059でも抑制されなかった.一方,MEKを基質としてrafのin vitroでキナーゼアッセイを行ったところ,バイカレインによってリン酸化が抑制され,またPD98059も抑制作用を示した.以上の結果より,バイカリンはアラキドン酸遊離を引き起こすcPLA<SUB>2</SUB>の上流に位置するMAPKカスケードを強く抑制することが明らかになった.その作用点として,rafによるMEKのリン酸化の抑制が考えられた.すなわち,バイカレインは,広く用いられているアスピリン様薬物のシクロオキシゲナーゼの阻害に基づくプロスタノイド産生の抑制とは異なり,アラキドン酸の遊離の上流部の細胞情報伝達系に作用すると考えられる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
大泉 康
東北大学大学院薬学研究科分子生物薬学分野
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大泉 康
東北大学大学院 薬学研究科 分子生物薬学分野
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中畑 則道
東北大院薬
-
中畑 則道
東北大学大学院薬学研究科 細胞情報薬学分野
-
中畑 則道
東北大学大学院薬学研究科
-
姜 れいき
東北大学大学院薬学研究科分子生物薬学教室
-
久津輪 瑞代
東北大学大学院薬学研究科分子生物薬学教室
-
中畑 則道
東北大学大学院薬学研究科分子生物薬学教室
-
大泉 康
東北大学大学院薬学研究科分子生物薬学教室
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