静岡市賤機および中藁地区の茶園土壌について
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概要
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静岡市賤機および中藁地区の茶園土壌について現地調査を行ない,さらに,採取した試料について理化学的性質を調べた。これらの結果を要約すると次のとおりである。<BR>1,賤機地区の茶園は,大部分が傾斜地に存在し,土壌断面形態の葦異によって牛妻―1,牛妻―2,郷島,野田平―1,野田平―2,油島,俵沢―1,俵沢―2,俵峰―1,俵峰―2の10種類に分けられるが,これらの土壌は比較的類似している点が多い。いま,これらの土壌の特徴を要約すると,腐植含量が一般に多く,第I層では富むないしすこぶる富む,第II層でも含む,富むあるいはすこぶる富むという状態である。したがって,土色も第1層では暗褐色ないし黒褐色を呈している。<BR>粘土含量が一般に少なく,油島型を除き,いずれも軽埴土に属する。また,全層位にわたって角礫を含むあるいは角礫に富む土壌が多い。さらに,深浅の差はあるが,下層に角礫層を伴う茶園がかなり多い。<BR>中藁地区の茶園も,一部沖積の平たん地茶園を除き,大部分が傾斜地茶園である。土壌断面形態の差異によって小布杉,市本,富厚里,青ノ木,夜打島,丸山,水見色―1,水見色―2,大原―1,大原―2,大原―3の11種類に分けられる。いま,これらの土壌の特徴を要約すると,賤機地区め茶園土壌と同様に,腐植含量が比較的多く,第I層では富むものが多く,第IIでは含むものが多い。したがって,土色も第I層は暗褐色,第II層は褐色のものが多い。<BR>粘土含量は一般に賤機地区の茶園土壌に比しさらに少なく,軽埴土ないし砂質埴壌土に属するものが多い。また,賤機地区と同様に,全層位にわたって角礫を含むあるいは富む土壌が多く,下層に角礫層を伴う茶園も部分的ではあるが存在することが推察された。<BR>2.一般理学的性質として三相分布,ち密度,最大容水量および水分当量を調べたが,賤機,中藁の両地区の茶園土壌ともに,一般にこれらの理学的性質は良好であった。<BR>3.一般化学的性質についてみると,賤機地区の茶園土壌では,酸度は土壌の種類のいかんを問わず,pH(H<SUB>2</SUB>O)で4台のものが大部分である。置換性石灰含量は第I層でtr.から最高30meまでかなり広範囲にわたっており,置換性塩基飽和度もかなり大きな値を示すものもあるが,全般的には比較的小さく,20%以下のものが多い。<BR>塩基置換容量は一般に大きく,特に"黒ボク"の茶園土壌では著しく大きいが,全般的には20〜30meの範囲のものが多い。<BR>有機物では第1層では一般に多く,いずれも腐植として5%以上であるが,10%以上を示すものもかなり多い。また,いずれも下層に向かって漸減あるいは激減している。炭素率も第I層では11〜17の範囲内のものが多い。<BR>有効態リン酸は第I層では一般に多く,10mg%以下あるいは50mg%以上のものもあるが,大部分は10〜50mg%の範囲である。しかし,第II層では著しく少なくなっている。<BR>窒素吸収係数は200以上を示すものが多いが,腐植質土壌では500〜700の範囲のものが多い。リン酸吸収係数は1000以上を示すものが大部分であるが,腐植質土壌では2000前後あるいはそれ以上を示している。<BR>中藁地区の茶園土壌では,酸度はpH(H<SUB>2</SUB>O)で4台のものが大部分であるが,そのうちでも4.5以下のものが多い。置換性石灰含量は第1層でtr.から最高5.2meまでで,比較的少なく,置換性塩基飽和度も大部分のもの330-0.以下であるが,そのうちでも10%以下というきわめて低い値を示すものがかなり多い。<BR>塩基置換容量は賤機地区の茶園土壌に比して一般に小さく,20me前後のものが多い。<BR>有機物は第I層で腐植として5〜10%の範囲に属するものが多い。炭素率も第I層では13〜19の範囲のものが多い。<BR>有効態リン酸は一般に賤機地区よりさらに多く,第I層では12.0〜132.1mg%の範囲に及んでいるが,20mg%以上のものが大部分である。<BR>窒素およびリン酸の両吸収係数ともに比較的小さく,大部分は窒素吸収係数が400以下,リン酸吸収係数が1000以下である。<BR>4.アルミニウムの溶出量についてみると,水溶性および置換性の両アルミニウムともに,一般に賤機地区の茶園土壌のほうが中藁地区の茶園土壌に比.して多い。第1層についてみると,賤機地区では水溶性が1mg%前後,置換性が50〜100mg%の範囲のものが多いが,中藁地区では水溶性が0,5mg%前後,置換性が50mg%以下のものが多い。<BR>5.石灰の添加量とpHとの関係をみると,賤機地区の茶園土壌では,いずれも軽埴土に属するため,石灰の添加量の増加に伴うpHの上昇程度は,おもに腐植含量の多少に支配され,腐植含量の多い土壌ほどpHの上昇程度が緩慢である。中藁地区では軽埴土と砂質埴壌土について調べたところ,pHの上昇程度が軽埴土では比較的緩慢であるが,砂質埴壌土では急激である。<BR>6.硫安,炭安,リン安からのアンモニアの吸収は,賎機および中藁の両地区の茶園土壌を通じ,一般にリン安からの吸収が最も多く,次が炭安で,硫安からの吸収が最も少ない。
- 日本茶業技術協会の論文
著者
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河合 惣吾
農林省茶業試験場土肥研究室
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河合 惣吾
農林省茶業試験場
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池ケ谷 賢次郎
農林省茶業試験場土壌肥料研究室
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石垣 幸三
農林省茶業試験場
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高柳 博次
農林省茶業試験場
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池ケ谷 賢次郎
農林省茶業試験場
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