皮革の熱変性に関する研究 : II. 未鞣製皮の比較的高温熱処理の影響

概要

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種々の皮革の熱変性,特に比較的高温熱処理(100°〜190°C)が皮革の性質に及ぼす影響を逐次追求するために,まず基礎的に鞣剤処理を行なわない未鞣製皮に対する比較的高温熱処理の影響を物理的性質と水抽出物組成の変化から考察した.1. 未鞣製皮の熱処理による物理的性質の劣化が明らかに認められ,引張強さおよび柔軟度の荷重は増加し,伸びは減少した,そしてこの変化は熱処理温度が高くなるにしたがつて大きく,また,皮中水分の含量の影響も認められ,高水分の場合よりも低水分の場合の劣化の程度は少なかつた.2. 水抽出物の組成から,100°〜160°Cの熱処理において,窒素,オキシプロリンおよび蛋白質の溶出量はいずれも対照試料のそれとほとんど差が認められず,190°C熱処理において,いずれも大きく増加したことを認めた.3. 160°C以下の熱処理において,皮構成蛋白質の分解がほとんど認められないにもかかわらず物理的性質の劣化が認められるのは熱分析の結果と合致し,コラーゲンの結晶部分の融解に帰因し,この変化が不可逆的な構造変化であつて,熱処理後も回復できないためであろう.なお,本研究の大要は昭和40年度日本農芸化学会大会において発表した.
社団法人日本畜産学会の論文