家兎皮膚の組織学的研究 : 第I報兎體部位及び品種による差異

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生後12カ月の白色在来種(白在という)と,アンゴラ種の牝(未経産)各2頭を用い,常法により屠殺剥皮して,肩,背,脇腹,下腹,尻の5部位より皮膚の小片を採取し,組織標本を作つて比較し,皮革資源としての良否につき考察を試みた。その主な成績は次の如くである。1 全皮厚の比較的厚い部位は背,肩,脇腹,尻にして,薄い部位は下腹である。アンゴラは白在に比し全皮厚は薄いが,厚さの部位による差は比較的少い。2 全表皮の比較的厚い部位は下腹と脇腹であり,背,肩,尻は比較的薄い。即ち皮厚の小なる所が,かえつて表皮が厚い。表皮のうち角化層と種子層の厚さも大体同様である。また,この傾向は白在もアンゴラも同じである。なお,アンゴラは白在に比し表皮各層が厚い。3 全眞皮の厚度においても兎体部位および品種間の差異は全皮厚の場合と全然同じことが言い得る。眞皮のうち乳頭層の厚度は白在,アンゴラ共に部位の間に著差はなく,また一般にアンゴラの方が白在より厚度大である。網状層の厚度の部位および品種間の差異は全眞皮の場合,延いては全皮厚の場合に平行する。4 網状層の膠質纎維の比較的太い部位は両品種共背であり細いのは下腹と尻である。また,この纎維は白在よりアンゴラの方が幾分細い。5 網状層の膠質纎維の交雜状態は両品種共,背において最も著しく,肩と脇腹がこれに次ぎ,下腹と尻とは著しくない。この交雜状態に於ける品種間の差異はない。6 乳頭層の彈力纎維は両品種共背において最も多く肩,脇腹,尻がこれに次ぎ,下腹が最も少い。また,この発達度における品種間の差異はない。7 汗腺にはSackdruseとKnaueldruseが區別せられ,肩において最も発達著しく,背と脇腹がこれに次ぐ。下腹と尻には汗腺は殆どみられない。一般にアンゴラより白在の方が汗腺の発達が著しいようである。8 皮脂腺の形,大きさ,発達度などについては兎体部位および品種により,とくに差を認めないようである。9 被毛密度の比較的大なるところは両品種共尻,背肩であり,脇腹がこれに次ぎ,下腹は被毛の数が最も少い。一般にこの密度はアンゴラは白在より大である。また,全被毛に対する緬毛の割合もアンゴラの方が大である。10 單位面積内の第1次毛群の数は両品種共.背,肩に多く,尻がこれに次ぎ,下腹,脇腹には少い。そしてこの数には両品種間に殆ど差かない。單位面積内の毛束数においては兎体部位間の差異は判然としないが,アンゴラは白在より幾分密度大である。1毛群内の被毛数は脇腹,尻に比較的多く,下腹に比較的少く,両品種間には大差ない。1毛群の毛束数には兎体部位および品種間に殆ど差異はないようである。11 被毛の纎度の比較的大なる部位は,粗毛では両品種共,背,肩,脇腹にして小なる部位は尻と下腹である。緬毛の纎度においては両品種共,部位による差は殆どない。一般に粗毛,緬毛共に白在よりアンゴラの方が細く,ことに粗毛における両者の差は著しい。12 以上の結果を綜合するに,家兎において比較的厚く丈夫ななめし革の得られる部位は肩,背,脇腹であり尻がこれに次ぎ,下腹は最も薄く最も弱い革であろう。また白在はアンゴラに比し厚く丈夫ななめし革が得られるが,革全体の厚さはアンゴラの方が揃つている。なお銀面において白在とアンゴラとは異り,アンゴラの方は柔らかみのある独特な感を与えるものとなるであろう。
社団法人日本畜産学会の論文

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