茶園における散水氷結法による凍霜害防止
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概要
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1979年,場内および現地農家ほ場のやぶぎた成木園でスプリンクラーによる防霜試験を行った。場内試験では3,月15日,25日,4月5日より散水を開始する区を設け,現地試験では,散水区(3月15日より散水開始)と無処理区を設け,防霜効果について調査した。<BR>散水の開始は茶株面上に設置したサーモスタットで,株面温度が設定温度以下になると自動的に散水装置が起動するようにして行った。<BR>(1)散水日数は3月16日〜5月3日に,場内試験では12日であり,散水強度は平均6.5mm/hrであった。現地試験では5日散水し,散水強度は2.3mm/hrであった。均等係数は,場内,現地それぞれ76.777.5であった。<BR>(2)散水による保温効果は,7.4mm/hrの散水で最大8.3℃以上2.3mm/hrで約3℃認められた。場内試験(散水強度平均6.5mm/hr)では散水を始めると,葉温は速やかに0℃前後となった。<BR>(3)陽内試験の結果,萌芽前の被害芽率では,散水の有無により差を生じたが,萌芽率が高くなるに従って,その差は無くなり,新芽の生育,収量に実質的な影響は及ぼさなかった。このことから,萌芽前の茶芽に実質的な被害を及ぼすような低温は,今回場内ほ場で経験した以下の温度であると考えられた。<BR>(4)現地ほ場では,4月18日に凍霜害を受け,散水区では被害を生じなかったが,無処理区では48.5%の被害を受けた。しかし,その後,開葉が進むにつれて,新たに無被害の芯を生じ,被害芽率は減少した。<BR>(5)わく摘み収量,収量構成要素については,4月18日の凍霜害を受けた現地ほ場で差がみられた。<BR>(6)全刈収量について,場内ほ場では,3月中旬〜4月上旬にかけて,処理間に,被害芽率で差が認められたが,全刈収量には,差は認められなかった。現地試験では,出開度約26%で調査したところ,散水区478kg/10a,無処理区308kg/10aと有意な差が認められた。<BR>(7)以上のことから,散水氷結法が茶園で有効であることが実証されたが,散水を開始する時期については,場内試験ほ場が,萌芽前に,新芽に実質的な被害を与えるような低温に合わなかったので,明快な答を得ることはできなかった。しかし,過去の報告と今回の結果より,防霜開始時期は,萌芽の始まる約10日前が適当であると考えられた。
- 日本茶業技術協会の論文
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