幼児における均等配分に関する認知発達:配分先が示されない場合の教示の効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
均等配分(同じように分けること)の実験では,従来の研究においては,人形にクッキーやアメを分けたり,皿に積木を分けたりする課題などで,人形や皿といった「配分先(いくつ分;除数)」が明確にわかるものが用いられていた.本研究では皿に分けるといった明確な配分先をなくした場合の配分行動について,幼児を対象にした個別実験の結果からその分析を行った.また本実験では,例えば6個のものを2個ずつ3つに分ける場合に,「2つずつ分けて」という教示のみがなされる群(Quotient; Q群)と,「3つに分けて」という教示のみがなされる群 (Divisor; D群)の2群を設定した.そして,そのような教示により,幼児の配分行動がどのように変化するのかに焦点をあてた.3歳から6歳までの幼児128名が,このいずれかの2群に割り当てられた.その結果,どの年齢においてもQ群の得点が高く,またD群では5歳から6歳にかけてのみ得点が上昇することが示された.これらの結果から分離量に関しては商を指示して配分をする方が早期に発達すること,また年少の幼児にとっては「○つに分けて」という理解が難しいということが示唆された.ここで示された結果は,年少幼児にとっては,等分除が,むしろ困難であるということを示したもので,就学後にわり算を学習する際,いくつ分かという除数を求める包含除の理解の困難さとは,矛盾する結果とも考えられる.
著者
関連論文
- 計算時における指の利用とそれに対する指導 : 教職志望の女子大学生による回想と指導に関する信念
- 幼児における均等配分に関する発達的研究(教育心理学関係博士論文要旨(2003年10月〜2004年9月))
- 幼児における均等配分方略の発達的変化
- 配分を促す教示の理解の発達的変化
- PB15 幼児における均等配分の発達的変化(VI) : 6歳児の理由づけについての発話を中心に
- PE08 幼児における均等配分の発達的変化(IV) : 連続量の配分行動の検討
- PE31 数詞獲得の日米比較(発達,ポスター発表E)
- 中が見えない複数の箱を用いた幼児の配分方略 : 皿への配分方略との比較から
- 幼児における配分方略の選択 : 皿1枚あたりの数の変化に着目して
- 分離量と連続量の両方の特性をもつものの配分行動 : 小豆の配分行動から
- 幼児における連続量の配分行動 : 分離量を用いた実験結果との比較
- PB007 分離量と連続量の2つの特性をもつ材料の配分行動 : 年長児と大学生の比較から(ポスター発表B,研究発表)
- インフォーマル算数とは何か : 加減算・わり算を中心に
- 配分課題における対話分析 : 発達遅滞児のケースから
- 幼児における均等配分に関する認知発達:配分先が示されない場合の教示の効果