ATP受容体による中枢機能調節:ミクログリアの役割
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
脳の高次機能は神経活動そのものに由来するが,神経細胞を取り囲む環境はグリア細胞によって維持されており,その活動もグリアによる影響を受けている.ATPをはじめとする細胞外ヌクレオチドは,近年,神経−グリア間伝達物質としての役割が証明され,ATP受容体を介したシグナル伝達は研究対象としての注目を集めている.生体内に普遍的に存在するヌクレオチドの細胞間情報伝達物質としての作用はリガンドや受容体の種類だけでなく,ヌクレオチド代謝酵素や様々なリン酸化酵素の存在を含め,時間的空間的に巧妙に制御されているようである.グリア細胞の1種であるミクログリアは中枢神経系における免疫担当細胞として多彩な機能を発揮する.これまでにミクログリアに発現するATP受容体にはP2X4,P2X7,P2Y2,P2Y6,P2Y12受容体が知られているが,各サブタイプの活性化はミクログリアに対して全く異なる細胞応答を引き起こす.脊髄神経傷害時,ミクログリアのP2X4受容体発現量は増大し,これを介した脳由来神経栄養因子(BDNF)の放出が脊髄後角神経の興奮性を変化させ痛覚の伝達に大きな変調をもたらす.P2X7受容体を介した細胞外液性因子の放出は,中枢組織の傷害時における炎症応答,また一方で神経保護作用を担い,神経細胞の生死に大きな影響を持っている.さらに,P2Y12受容体はミクログリアの細胞外ATPに対する走化性を制御しており,P2Y6受容体の活性化は細胞外異物に対する貪食作用を惹起する.このようにミクログリアに対する各ATP受容体サブタイプの作用は広範であり,細胞外ヌクレオチドによるミクログリアの細胞機能調節は中枢環境の調節に深く関与している.
著者
関連論文
- ATP受容体による中枢機能調節:ミクログリアの役割
- 高速原子間力顕微鏡を用いた受容体の一分子イメージング
- 痛みの克服に向けて
- 脊髄ミクログリアのP2プリン受容体と神経障害性疼痛 (伝達物質と受容体)
- 鎮痛薬開発の現状とこれから (特集 慢性疼痛の薬学的ケア)
- 神経因性疼痛と脊髄ミクログリアのATP受容体
- 細胞外ATPを介した表皮ケラチノサイト-知覚神経間コミュニケーション ; 痛み伝達への関与
- 脊髄ミクログリア細胞の痛みへの役割
- 神経因性疼痛におけるミクログリア発現分子の役割
- 神経因性疼痛発症メカニズムにおけるミクログリアとATP受容体の役割
- 神経因性疼痛とATP
- ATPと神経因性疼痛
- 痛覚系に関与するATP受容体
- 痛みとATP (特集 情報伝達物質としてのATP)
- ATPと痛み
- ラット足底部へのP2X受容体作動薬投与により誘発される痛覚過敏反応
- ATP受容体シグナル伝達系と創薬
- HDL産生を促進するLXRαパーシャルアゴニスト/ LXRβアンタゴニスト riccardin C の発見
- ラット血管平滑筋における甲状腺ホルモンの石灰化抑制作用
- 脊髄ミクログリアのATP受容体を介する新しい神経因性疼痛メカニズム
- ATP受容体による中枢機能調節 : ミクログリアの役割
- 慢性疼痛における細胞外ヌクレオチドとその受容体の役割
- 脊髄ミクログリアを介する神経因性疼痛の発症維持メカニズム
- P2Y_受容体を介するミクログリアの細胞運動
- ささやかなエールを
- 脳内グリア細胞におけるATPセンサーを介した情報伝達
- グリア細胞によるシナプス伝達制御 : 細胞外ATPの役割
- 中枢神経系ネットワークとATP (特集 情報伝達物質としてのATP)
- 細胞外ATPを介したグリア-ニューロン相互調節機構 (特集 解明が進むグリア細胞の役割--グリア-ニューロン回路網が支える脳機能) -- (生理学的役割)
- 海馬初代培養神経細胞のCa^-oscillation に対するATPの抑制作用
- 亜鉛イオンによるUTP応答の抑制作用
- 神経伝達物質としてのATP : エネルギー通貨の中枢神経系における新しい可能性
- 私の薬理
- 痛みの分子メカニズム
- 痛みの分子メカニズムミクログリアと神経障害性疼痛との関わり
- 末梢神経損傷による神経障害性疼痛とグリア (特集 痛みの神経学 : 末梢神経から脳まで)