痛覚系に関与するATP受容体
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ATP受容体はイオンチャネル型受容体のP2XファミリーとGタンパク質共役型受容体のP2Yファミリーに大別され,それぞれ7種類と9種類のサブタイプが報告されている.ATP受容体は,痛み刺激を受ける皮膚,痛み刺激を受けて活動電位を引き起こし脊髄まで伝達する後根神経節(DRG)ニューロン,DRGニューロンの入力先である脊髄後角ニューロン,さらに上位中枢神経系,そして脊髄内のDRGニューロンと後角ニューロン間シナプス周囲に分布するグリア細胞にも発現して,痛みの発生や変調に関わっていると考えられる.それぞれに発現するATP受容体サブタイプは異なり,例えば,正常ヒト表皮角化細胞ではP2Y2が最も高濃度に発現しており,細胞間情報伝達および皮膚-DRGニューロン間情報伝達を担っているようである.DRGニューロンにはP2X7を除く6種類のP2X型受容体と,P2Y1やP2Y2などが発現し,自発痛には主としてC-線維末梢端に発現するP2X3ホモマー受容体が関与し,急性メカニカル・アロディニア(異痛症:触・圧刺激を痛みと感じてしまう病態)発症にはAδ末梢端に発現するP2X2とP2X3によるヘテロマー受容体(P2X2/3)が関与していると考えられる.DRGニューロン末梢端のP2Y系は,Gq/PLCβ/DG/PKCカスケードによりTRPV1をリン酸化することによりその温度感受性を体温レベルにまで下げ,結果として熱感受性亢進による疼痛増強を引き起こす.さらに,P2Y2刺激はC-線維に依存するがTRPV1とは独立したメカニズムで強烈な持続性のメカニカル・アロディニアを惹起する.脊髄後角ではDRGニューロン中枢端に発現するP2Xの活性化によりグルタミン酸放出が増加し,痛み増強につながる.最近,神経損傷により脊髄後角のミクログリアが活性化し,そこに強度に発現したP2X4受容体の刺激が神経因性疼痛を引き起こすことが明らかとなり,注目を浴びている.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
著者
-
井上 和秀
国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部
-
井上 和秀
九州大学 大学院 薬学研究院 医療薬科学専攻 薬理学分野
-
小泉 修一
国立医薬品食品衛生研究所薬理
-
津田 誠
国立医薬品食品衛生研究所
-
小泉 修一
山梨大学医学部薬理学
-
津田 誠
九州大学 大学院 薬学研究院 医療薬科学専攻 薬理学分野
-
井上 和秀
国立医薬品食品衛生研究所 薬理
-
小泉 修一
国立医薬品食品衛生研究所 薬理部
-
井上 和秀
国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部
-
津田 誠
国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部
関連論文
- ATP受容体による中枢機能調節:ミクログリアの役割
- 高速原子間力顕微鏡を用いた受容体の一分子イメージング
- 脊髄内痛覚伝達におけるATPとアデノシンの相互作用
- 痛みの克服に向けて
- 脊髄ミクログリアのP2プリン受容体と神経障害性疼痛 (伝達物質と受容体)
- 鎮痛薬開発の現状とこれから (特集 慢性疼痛の薬学的ケア)
- 神経因性疼痛と脊髄ミクログリアのATP受容体
- 細胞外ATPを介した表皮ケラチノサイト-知覚神経間コミュニケーション ; 痛み伝達への関与
- 脊髄ミクログリア細胞の痛みへの役割
- 神経因性疼痛におけるミクログリア発現分子の役割
- 神経因性疼痛発症メカニズムにおけるミクログリアとATP受容体の役割
- 神経因性疼痛とATP
- ATPと神経因性疼痛
- 痛覚系に関与するATP受容体
- 痛みとATP (特集 情報伝達物質としてのATP)
- ATPと痛み
- ラット足底部へのP2X受容体作動薬投与により誘発される痛覚過敏反応
- ATP受容体シグナル伝達系と創薬
- HDL産生を促進するLXRαパーシャルアゴニスト/ LXRβアンタゴニスト riccardin C の発見
- ラット血管平滑筋における甲状腺ホルモンの石灰化抑制作用
- 脊髄ミクログリアのATP受容体を介する新しい神経因性疼痛メカニズム
- ラット初代培養海馬神経細胞におけるグルタミン酸およびイオノマイシンによる細胞内カルシウムイオンとpH変化の差異
- 海馬神経細胞におけるカルシウムウェーブの画像化
- ATP受容体による中枢機能調節 : ミクログリアの役割
- 慢性疼痛における細胞外ヌクレオチドとその受容体の役割
- P2Y_受容体を介するミクログリアの細胞運動
- 脳内グリア細胞におけるATPセンサーを介した情報伝達
- グリア細胞によるシナプス伝達制御 : 細胞外ATPの役割
- 中枢神経系ネットワークとATP (特集 情報伝達物質としてのATP)
- 細胞外ヌクレオチドを介した中枢神経系の細胞間情報連絡
- 1M0930 PC12細胞においてミトコンドリア膜透過性遷移は開口放出を促進する(15.神経・感覚,一般演題,日本生物物理学会第40回年会)
- Neuro2004 の成功
- Neuro2004 の成功
- 細胞外ATPを介したグリア-ニューロン相互調節機構 (特集 解明が進むグリア細胞の役割--グリア-ニューロン回路網が支える脳機能) -- (生理学的役割)
- 「Purines2000」及び「第一回免疫系におけるヌクレオチドおよびその受容体に関するワークショップ」
- ATP受容体の脳内生理機能
- ATPによる神経伝達物質放出の抑制
- ATPによる神経伝達物質放出の制御
- 中枢ATPレセプターに関して
- 脳内金属イオンと神経機能制御機構
- ATP受容体 (受容体 1997) -- (Gタンパク質共役型受容体--神経伝達物質・ホルモン)
- ATP受容体 (受容体 1997) -- (イオノトロピック受容体)
- アストロサイトによるダイナミックなシナプス伝達制御 : 細胞外ATPの関与
- 神経系におけるグリア細胞の新しい役割
- カルシウム遊離の基本単位 : "spark & puff"
- 羊の里だより
- 海馬初代培養神経細胞のCa^-oscillation に対するATPの抑制作用
- 亜鉛イオンによるUTP応答の抑制作用
- 神経伝達物質としてのATP : エネルギー通貨の中枢神経系における新しい可能性
- 脊髄後角深層細胞に発現するATP P2X受容体の機能意義
- 1PA033 PC12細胞におけるATP合成過程の研究 : 細胞内Ca2+濃度上昇の影響
- PC12細胞におけるカルシウム信号変換機構のイメージング
- 私の薬理
- 2P177PC12細胞の開口放出に及ぼすミトコンドリア膜透過性変化の影響
- ミクログリアにおけるATP受容体の発現と脳内生理機能 (特集 グリアの生物科学)
- ATP・アデノシンの疼痛受容における役割--ATPを介するミクログリア活性化と神経因性疼痛 (第5土曜特集 痛みシグナルの制御機構と最新治療エビデンス) -- (疼痛の生理機構と分子メカニズム)
- 疼痛制御におけるATP受容体の役割 (12月第1土曜特集 痛みとその制御機構--分子メカニズムと治療の最前線) -- (疼痛の生理機構と分子メカニズム)
- ATP受容体の脳・神経系での役割 (特集 Gタンパク質共役受容体と脳機能)
- ATPレセプター (特集 痛みの分子メカニズムと臨床--基礎研究と治療の最前線) -- (REVIEW 1:痛みの分子メカニズム)
- 痛みの分子メカニズム
- Astrocyteの新しい役割(明日の脳神経外科を拓く神経科学)
- 痛みの分子メカニズムミクログリアと神経障害性疼痛との関わり
- 緑内障研究の進歩 : より質の高い緑内障診療を目指して
- 末梢神経損傷による神経障害性疼痛とグリア (特集 痛みの神経学 : 末梢神経から脳まで)