本邦における血液凝固後天性インヒビターの実態
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概要
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後天性インヒビターによる出血症状は, 一般に強く, 難治性で治療に苦慮する症例も多い. 近年, 凝固検査の普及により報告例が増加しつつあるが, わが国における後天性インヒビターの実態は不明であり, 治療法も標準化されていない. そこで, 日本血栓止血学会学術検討部会凝固委員会(森田隆司委員長)が実態調査を行った. 方法は日本血栓止血学会会員を中心に1次アンケートを依頼し, 後天性インヒビターの症例を有するとの返答のあった施設に対して2次アンケート調査を依頼した(調査期間:平成13年1月より平成14年5月31日). 計75症例の後天性インヒビターの報告があった. 内訳は, 抗第VIII因子インヒビター58例, 抗von Willebrand因子インヒビター7例, 抗第V因子インヒビター5例, 抗プロトロンビンインヒビター1例, 抗XI因子インヒビター1例, 抗フィブリノゲンインヒビター1例, 抗第VIII因子+第V因子+フィブリノゲン複合インヒビター1例, 抗第VIII因子+第IX因子複合インヒビター1例であった. 男女比は 41:34, 発症年齢の範囲は2〜80歳でピークは70歳台であった. 基礎疾患のある例とない例との比は 29:46であった. 基礎疾患や臨床背景で多かったのは自己免疫性疾患, リンパ増殖性疾患や腫瘍, 妊娠, 分娩, 糖尿病などであった. 止血療法で抗第VIII因子インヒビター例では, 第VIII因子製剤22例が最も多く使用されていたが, 有効率は低く, 活性型第VII因子製剤や(A)PCC製剤などによるバイパス療法の有効率が高かった. 免疫抑制療法としてはステロイドの内服投与が最も多かった. 有効率は約60%で, 他の免疫抑制剤も同様であった. 転帰はインヒビター消失例37例, 低下例14例, 不変例8例で, 死亡率は15%であった.
- 日本血栓止血学会の論文
- 2003-04-01
著者
-
中村 伸
日本血栓止血学会学術検討部会凝固委員会
-
田中 一郎
奈良県立医科大学小児科
-
嶋 緑倫
日本血栓止血学会学術検討部会凝固委員会
-
川合 陽子
日本血栓止血学会学術検討部会凝固委員会
-
辻 肇
日本血栓止血学会学術検討部会凝固委員会
-
森田 隆司
日本血栓止血学会学術検討部会凝固委員会
-
嶋 緑倫
奈良県立医科大学 小児科
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