ノリ養殖漁場を考慮に入れた有明海湾奥浅海域における流動解析
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概要
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A numerical simulation model has been developed to evaluate the effect of nori aquafarming grounds on the tidal currents in the Ariake Sea coastal waters. The Ariake Sea, a typical semi-closed bay located in the Kyushu Island in Japan, is very rich in many marine products, including nori. Numerous nori aquafarming grounds are installed in the coastal waters of the Ariake Sea during winter. A twodimensional depth-integrated model developed by integrating the three-dimensional continuity equation and momentum equations has been used to simulate tidal currents in the Ariake Sea. Because the maximum tidal variation in the Ariake Sea is approximately 6 m, a wetting and drying scheme is incorporated in the model in order to simulate the emergence and disappearance of tidal flats. Numerical simulations have been carried out using the data pertaining to the actual water depth, observed river inflow rates, wind fields calculated by using a mass-consistent model, sea-water levels calculated at open boundaries, and the actual distribution of the aquafarming grounds and installation density of aquafarming equipment. To validate the model, the simulation results are compared with the observed data at six points in the coastal waters. The velocities and directions of the simulated tidal currents are in good agreement with those observed data. Nori layers growing in the aquafarming attach themselves to nets supported by rods at the sea surface in the Ariake Sea; sufficient tidal current velocity and nutrients supply are absolutely essentialfor obtaining high quality of nori products. The optimum arrangement of the aquafarming grounds and optimum installation density of the aquafarming equipments have been investigated by numerical simulations performed using the developed simulation model in various assumed scenarios. On the basis of the simulation results, the optimum aquafarming ground arrangement and installation density are decided from the viewpoint of the tidal current velocity.本研究では、有明海を対象としたシミュレーションモデルを構築した。そのモデルを用いて、有明海で盛んに行われているノリの養殖について、潮流への影響評価のためのシナリオ分析を行い、ノリ養殖施設が潮流に与える影響について検討した。まず、シミュレーションモデルの構築を行った。モデルは2次元単層モデルとし、基礎方程式には連続方程式およびReynoldsの3次元運動方程式を用い、それぞれを水深方向に積分することにより2次元単層モデルの支配方程式を求めた。浅海域の解析の際に問題となる干潟の処理には、Land Mask関数を導入することにより、移動海岸線の追跡を行った。そして、海底地形、河川流量、風速および潮位を与え、ノリ養殖施設の抵抗をモデルに組み込みシミュレーションを行った。さらに、ななつはぜ、筑後川沖(福岡県側)、矢部川沖、大牟田沖、早津江川沖、筑後川沖(佐賀県側)の6地点において、モデルの再現性を確かめるため、実測値と計算値の潮流の流向・流速を比較した。その結果、上記6地点において、流向・流速ともに良好な一致が見られ、このモデルの再現性が良好であることが示された。有明海に広がるノリ養殖施設には、密度がかなり高くなっている箇所が見られる。そのため、本研究ではこのことが潮流に影響を与え、多少なりともノリの成長に影響を及ぼしていると想定し、影響を減少させるためのシナリオ分析を行った。その結果、ノリ区画間の潮通しの幅の確保およびノリ網の5列張りから4列張りへの変更の二つが特に潮流への影響緩和に有効であることが分かった。また、これはノリ養殖施設が潮流に対し影響を与えているということを示している。ノリの成長への影響について検討を行うためには、栄養塩の収支を考慮に入れる必要がある。そのため、拡散方程式の導入、シミュレーションモデルの3次元化および生態系モデルの構築が今後の研究課題とされる。
- 2010-10-29
著者
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