ADI法を用いた2次元単層モデルによる湖山池湖流の数値解析
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概要
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鳥取県湖山池は,富栄養化・有機汚濁の進行により,さまざまな水環境問題を抱えている.同池の水環境の保全・改善に向けた基礎的研究として,ADI法を用いた2次元単層モデルにより潮流の流動特性について検討した.湖山池周辺の代表風向である西風,北西風,北風の3ケースを想定し,数値シミュレーションを行なった.まず,流速および水位変動の時間的変化について検討した.その結果,いずれの地点においても流速と水位変動は,計算開始から40時間程度で収束し,定常状態に達していた.また,湖心の水位変動は振動幅が小さく,湖岸付近では振動幅の大きいセイシュが長時間継続していた.このことから,本モデルは閉鎖性水域におけるセイシュ発生の現象を良好に再現していると考えられた.つぎに,湖山池における大局的な潮流の流動パターンについて考察を行なった.その結果,風向の違いにより発生する水平循環流のパターンが異なっていることがわかった.また,3ケースの計算結果はいずれも,水深の浅い領域で吹送流に起因する順流が生じ,水深の深い商域では傾斜流に起因する逆流が生じており,これらの流れが水平循環流を形成させていた.このような計算結果は,湖山池の湖盆形状と水平循環流の発生機構を十分に反映したものと考えられた.最後に,潮流の流動特性の観点から,湖山池の底質環境について検討した.3ケースの流動パターンと,底質の粒度組成を比較検討したところ,流速が小さく流れが停滞している領域で粘土は多く,また流れが速い沿岸付近で粘土は少ないことがわかった.これらは,懸濁物の沈降・堆積の過程を反映した結果であると考えられ,湖内の流動特性は底質環境と密接に関わっていることが示された.Lake Koyama in Tottori Prefecture has various water environmental problems due to organic pollution and eutrophication. As part of the fundamental research aiming at preserving and improving the water environment in Lake Koyama, the authors examined the characteristics of lake currents using the two-dimensional one-layer model incorporated with Altenative Direction Implicit method. Numerical simulations were excuted in the three cases of westerly wind, north-westerly wind and northerly wind based on wind directions representative of the area surrounding Lake Koyama. First, the changes over time in current velocity and water level were examined. The results showed that current velocity and water level at all locations converged and that a steady state was achieved at about 40 hours after the start of calculations. The water level at the center of the lake had a small range of oscillation. At close vicinity to the both banks, the seiche with large oscillations continued for a long time. Therefore, this model could effectively recreate the seiche generation in the lake. Next, the patterns of overall lake currents in Lake Koyama were deliberated. As a result, patterns of horizontal circling drift differed depending on differences in wind direction. Also, the following currents occurred owing to wind-driven currents in shallow water areas and the reverse currents arised due to slope currents in deep water areas. These calculation results clearly reflected the mechanisms of the horizontal circling drift and the bottom topography in Lake Koyama. Finally, the bottom sediment environment in Lake Koyama was investigated from the perspective of the currents characteristics. The comparison of the patterns of horizontal circling drift with the distribution of grain size composition of the sediment in the three cases clarified that the clay accumulated in the areas with low current velocity. Also, the ratio of clay in the bottom sediment was low in the areas where the current is fast. These results reflected the process of sedimentation and accumulation of sludge, and indicated that the currents characteristics in the Lake were closely related to the bottom sediment environment.
- 九州大学の論文
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