アナグマの肺吸虫感染例について
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概要
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アナグマは全国的にみて,他の野獣に比べ捕獲数が非常に少ないこともあってか,肺吸虫感染例の報告は極めて少ない.われわれは昭和49~51年度猟期に,宮崎県下で捕獲したアナグマ10頭中3例に宮崎肺吸虫(P.m.)の感染を認め,その成績は既に報告した. 今回は昭和52・53年度猟期に捕えた6頭を検査し, うち2例に同じく P.m. の寄生を認めた. 前回と今回の成績を合わせると,16頭中5例(31.3%)に P.m. 感染を認めたことになる. 従前,われわれは宮崎県下で捕獲したテンからも,かなりの率(21.9%)に P.m. を検出した. これらの事実を併せ考えるとき, 同県下の野獣にはかなり濃厚に P.m. が浸潤するものと思われる. P.m. の人体感染が問題になっている折から,野獣の P.m. 感染は公衆衛生上からも重視する必要があろう. 今回のアナグマ第1例は, 両肺を合わせて40コの虫嚢形成と12ヵ所に組織内穿入虫体及びそれに伴う病変を所見した. すなわち侵入・寄生の虫体は合わせて約80匹という極めて重度の感染例であった. 第2例は6コの虫嚢を認めた中等度の症例. 第1例のごとく多数の感染が起きたこと,また肺に侵入・寄生する虫体の大部分がよく成熟していたことから, アナグマは P.m. の好適宿主と判断される. 2例の供試肺を病理学的に検索した結果,その所見は原則的には肺吸虫症病理に関する先人の記載に一致する. ただ多数の虫体が侵入・寄生する割りには, 虫卵性病変はとくに顕著ではなかった. ただし,付属リンパ節の虫卵栓塞はかなり著しいものであった. なお前回の陽性アナグマで所見したような,虫嚢周囲部における気管支系の高度のカタル性変化は認めなかった.Few reports have been made on paragonimus infection in the Japanese badger (Meles meles anakuma). This may be because the Japanese badger is not as often captured compared to other wild mammals in Japan. In a previous paper, we reported that 3 out of 10 Japanese badgers captured in Miyazaki Prefecture during the hunting seasons of 1974-1976, were infected by Paragonimus miyazakii. In the present study, we examined 6 Japanese badgers captured in Miyazaki Prefecture during the hunting seasons of 1977-1978, and found Paragonimus miyazakii in 2 of them. The results are as follows. In the first badger, 40 worm-cysts, i. e., 23 worm-cysts in the right lung and 17 in the left lung were found together with flukes penetrating into the pulmonary tissue, and accompanying lesions in 12 parts of both lungs. That is, the number of parasitic and penetrating flukes was about 80: This badger was a rare case of severe infection. The second case was moderately infected. It had 6 worm-cysts; that is 2 in the right lung and 4 in the left lung. Since infection of a large number of flukes occurred as in the first case, and since most of the parasitic and penetrating flukes were matured, the Japanese badger is considered to be a suitable host for Paragonimus miyazakii. The pathological findings of the lungs of the above two badgers were in accordance with the general description by previous workers in the pathology of paragonimiasis. But the lesions caused by the eggs of the flukes were not so very remarkable even though a large number of flukes had invaded and many of these flukes were matured. In the cases reported previously, a marked catarrhal change in the bronchial system around the worm-cyst, and efflux of a large amount of mucus into the adjacent alveolar area were observed. However, in the two cases reported here, no such finding was observed. Since, human infection of Paragonimus miyazakii is now definitely, the infection of Paragonimus miyazakii in Japanese badgers and other wild mammals may be important on public health.
著者
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