精索脱分化型脂肪肉腫の1例

概要

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79歳男。患者は右陰嚢内容の無痛性腫脹を主訴とした。右陰嚢内に超鶏卵大で一部硬結を伴う弾性軟の腫瘤が触知され, 表在リンパ節の腫脹は認めなかった。画像所見で右陰嚢内腫瘍が疑われ, 右高位精巣摘除術を施行したが, 周囲との癒着は認めなかった。病理学的所見ではコロイド状の腫瘤部は粘液腫状の基質を背景に異型紡錘細胞, 異型多核巨細胞が繊細な血管網を伴って増生し, Myxofibrosarcoma様の所見を呈していた。また, その周囲には大小不同の脂肪細胞, 少量の脂肪芽細胞からなる高分化型のliposarcomaの所見が確認された。高分化型のliposarcomaがmyxofibrosarcoma様に脱分化したdedifferentiated liposarcomaと診断され, 精索断端陽性で3週間後に追加切除を試みたが, 病理学的には異型のみであった。患者希望により補助療法は行わなかったが, 術後1年の現在, 再発徴候は認められていない。尚, 脂肪肉腫の陰嚢内発生は比較的稀で, 我が国では精索・陰嚢内発生のうち組織が脱分化型と報告された例は, 検索した限り, 本症例を含め2例だけであった。