多発性硬化症と視神経脊髄炎患者における出産および就労状況
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概要
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多発性硬化症 (MS) および視神経脊髄炎 (NMO)は中枢神経系の様々な部位に炎症を繰り返す難治性の疾患であり、若年女性に好発するため、妊娠・出産、就労などの人生の転機における決断に様々な影響を与え得る。しかし、近年までNMOはMSの一亜型と考えられていたため、両者を区別した調査はほとんど行われておらず、各々の実態の相違はまだ十分にわかっていない。MSおよびNMO患者における妊娠・出産の現状および就労状況に関する理解を深めるため、両者を対象に行われたアンケート調査の結果を分析して検討を行った。,アンケート調査はノバルティスファーマ株式会社の企画、特定非営利活動法人MSキャビンの協力で2011年10月28日〜2011年11月21日に行われ、943人から回答を得た。回答者のうち診断名がはっきりしないと答えた28人と記載漏れなどで使用できない85人を除外した830人を解析の対象とした。妊娠・出産経験者のうち、診断された後に妊娠・出産した人はNMO群で4%であったのに対しMS群では27%であり、MSにおける疾患修飾療法の普及や医療者の理解の向上がよい影響を及ぼしていると考えられた。一方で、フルタイムで働いている人は診断時から現在までにかけてMS群で46%、NMO群で50%減少し、「働いていない」と答えた人が大幅に増加していた。過半数の人が病気の症状や体力の低下が仕事上の悩み・困難の原因になったと答え、体調に合わせられる働き口を探すことが困難だと感じていた。MS/NMOでは多くの患者が就労上の様々な制限や困難に直面していることが示唆された。,MS/NMOの患者の生活の質の改善を目指すには、早期から十分な治療介入を行うことによって障害の進行を未然に防ぐことに加えて、就労環境の整備や継続的支援が不可欠であり、難病相談・支援センターや、患者会の担う役割は大きい。
- 2014-01-31
著者
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大橋 高志
東京女子医科大学医学部神経内科学
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大橋 高志
東京女子医大八千代医療センター神経内科
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清水 さおり
ノバルティスファーマ株式会社
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鈴江 美恵子
ノバルティスファーマ株式会社
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大橋 高志
東京女子医科大学八千代医療センター神経内科
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