既知人物の目撃証言の信憑性 : 裁判事例を用いた心理学的視点からの判例分析
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概要
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本研究では、事実認定において既知人物の目撃証言に対する判断が示された裁判事例を用い、その判決文において示された証言に対する信憑性評価を、心理学的視点から検討することを試みた。対象とした証言は、事実認定において重要視され、裁判官の心証形成に深くかかわった既知証人の証言である。方法として、各証言を分析する際に、証言項目、証人の証言内容、弁護人と検察官の主張および裁判官の判断といった項目を設定し、実際の証言から、各項目に対応する内容を表にまとめる手法を用いた。そしてこの項目ごとに、科学的な知見と矛盾した判断がなされていないか、心理学的な見地から検討を行った。その結果、既知人物の目撃証言は、(1)「知り合いであれば見間違わない」という経験則が裁判上で過度に信用されていること、(2)証言の信憑性評価が証人の確信度評価に大きく依存すること、そして(3)面通しが有効に機能しないという3つの問題点を指摘しえた。このことより、本研究は、今後既知人物の目撃証言の信憑性を判断する際の重要な留意点を示唆しえたといえよう。
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